アフター・トランプ時代の事業環境

米国大統領選およびその後の手続きが(議事堂乱入という恥ずべき事件を経て)完了したことで、ようやく「トランプ反動時代」が終了しました。ただし元の世界に戻るのでは決してなく、コロナ禍で一遍した社会で、バイデン政権の方向性が世界的に大きな影響を与えると考えられます。以下にその要素を幾つか挙げてみました。

【政治的観点】100日程度とされる「ハネムーン期間」の間にやれることをしようと、矢継ぎ早の対策が取られています。国内的にはコロナ禍からの回復を狙う空前の大規模経済対策が実施され、中でもコロナからの生活再建支援策と地球環境対策(New Green Deal)が主要政策になりそうです(パリ協定への復帰はその一歩)。とはいえ、民主党の「大きな政府」志向を毛嫌いする共和党の抵抗はオバマ時代と同様に激しいものになりそうです。

対中強硬路線は続きます。「損得勘定」を前面に出したトランプ政権との違いを出すため、昔のカーター政権のように「人権」や「理念」を前面に押し出して中国に圧力を加える動きになる可能性が高く、中国とすると却って対処しづらく、米中分断が深化・固定化する方向に動きそうです。

【経済的観点】大規模経済対策というカンフル剤によって投機マネーが市場に溢れかえるため、短期的には不況下の株高と、米国発のインフレが世界に波及する可能性が高まっています。産業的には、CO2排出系事業が窮地に追い込まれ環境系事業(クルマ電動化を含む)が急速に勢力を伸ばしそうです。

その一方で、米国が挑戦者・中国を蹴落とすため、ハイテク技術に関わる貿易や技術交流に規制を仕掛ける動きはより巧妙・多重的になり、世界主要国が「米国協調派」と「中国重視派」に分かれる「擬似ブロック経済化」が実質的に進む可能性が濃くなっています。日本の立ち位置はますます微妙になります。

【社会的観点】主要国での貧富拡大と社会分断の傾向はトランプ後も変わりません。なぜならそれはトランプが起こしたものではなく、グローバル経済化とネット普及などによって促されたものだからです。米国では特に、トランプ支持者に代表される「被害者意識を根強く持った白人至上主義者(学歴は低め)」と「白人男性優位社会を糾弾するリベラル志向者(高学歴者と低学歴者の2層の集まり)」との対立がますます先鋭化するでしょう。

しかし一方で、これまでのマネーを最重視する社会規範に疑問を呈する人々が米国でさえ急増しており、環境重視や社会性重視といったSDGs的価値観が主要国では広がると見られます。この部分は「救い」ですね。