アパレルのサプライチェーンの酷さを改めて考える

最近関与しているプロジェクトの一つに、「ブロックチェーンなどの最新技術を使って様々な業界のサプライチェーン(SC)を改善する方法を考える」というものがあり、その中でアパレル(衣料)業界のSCを考える機会がありました。

アパレル業界といえばこの20年余り、レナウンの身売りをはじめ、ワールドの上場廃止(同社はその後再上場している)、バーバリーブランドを失った三陽商会の苦戦など、業界大手の不振が様々な形で報道されてきました。

ユニクロ(ファーストリテーリング)やH&Mなどのファーストファッション系SPAが世界的に成長する一方で、大手のアパレル会社が経営不振に直面している構図は、一見、単なる新陳代謝がこの業界でも大々的に起きているだけかと思われがちです。
 
しかし大手のアパレル会社の経営不振の最も根幹にある原因は、自ら招いたビジネスモデルの変質、とりわけSCの劣化にあります。

単なるコスト低減のためだけに、元々の強みである「素材の工夫」や「手先の器用さ」を活かした日本でのモノ作りを捨て去り(そのせいで日本の衣料製造業は瀕死状態に陥りました)、中国での大量生産に舵を切った時点で、世界市場で勝ち残る選択肢を自ら捨てたのです。そして大量の商品を急増するSCや増床する百貨店に供給するために、商社やOEMメーカーに商品づくりを丸投げし、自らの商品企画(マーチャンダイジング)力を弱める方向にひた走ったのです。

その結果が、1)どのブランドでも同じような商品が溢れる「没個性化」を招き、2)SCの川上~川中~川下が完全に分断されて情報が共有化されず、しかもそれぞれのプロセスでのサイクルが長期化し(日本で企画し、中国で製造し、日本で売るので、当然といえば当然)、SCが劣化してしまったのです。

劣化したSCでは「ブルウィップ効果」という現象が出やすくなります。機会損失を恐れるばかりに過剰発注を繰り返しSCの途中と末端で大量に不良在庫を抱え込む結果、大量の売れ残りを大幅ディスカウントやアウトレットでセールするパターンが定着します。その結果、3)消費者は「価格への不信感」を募らせ、余計にディスカウント・セールスが常態化し、利益が吹き飛ぶという悪循環です。

このような「業界こぞって自らの首を絞める」構図に対し、(利益が上がっていた時には大した投資をせずに、苦しくなっても首切りなどのコスト削減しかせずに)ほとんど有効な対策を打とうとしなかったのがアパレル業界なのです。

それどころか消費者接点として最も大切な販売員に対する人的投資すらほとんど避けてきたため、今やアパレルの販売店員といえば3Kの一つに数えられるくらいです。こういったアパレル業界の無為無策ぶりは『誰がアパレルを殺すのか』に詳しいので、一読をお薦めします(→私の本ブログでも取り上げています)。

こうしたアパレルのSCを改善する方法として情報共有化に有効な手段を冒頭のプロジェクトでは考案したのですが、さてこの業界の根本の悪さを断ち切ることができるかというと、はなはだ自信がないのが今の正直な気持ちです。

なぜならSCそのものが消費地(日本)から物理的にかけ離れた中国またはベトナム・バングラデシュにある場合、そしてSC内の各プロセスが大幅に圧縮されない限り、どれだけ随時適切な情報が共有されても執り得る策と有効性には限りがあるからです。

このプロジェクトは最終的にはより有効な適用業界を絞ることになるので、アパレル業界が最後まで残る可能性は限りなく小さいと、率直に思わざるを得ません。