「自力で歩きたい、座りたい」の願いを叶える技術

日本の製造業が培ってきたものづくり技術は非常に高いレベルにあり、応用もできる。技術者たちの挑戦が、やり方次第で高齢者や先天性の障害を持つ人たちにとって希望のともしびとなりうる。

このことを「歩行」というテーマに焦点を当てて紹介したのが7月26日放送の「ガイアの夜明け」の「自分の力で歩きたい…~患者を救う”極めた技術”~」だった。
http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber3/preview_20160726.html

この日は2つの技術が紹介された。一つ目はホンダの歩行アシスト。

番組は、高齢者のリハビリの一コマから始まった。3カ月前に脳梗塞を患い、右半身が不自由となった70代男性が歩行訓練をする姿だ。機器を装着した男性は、5分後には杖なしで歩き、20分後には機器を取り外した状態でも杖なしで歩けた。素晴らしい。

本田技研工業が開発した歩行訓練機器Honda歩行アシストは「倒立振子モデル」と呼ばれる考えに基づく効率的な歩行をサポートする装置だ。ヒューマノイドロボットASIMOの開発で培った技術、そしてF1チームでの経験が生かされているという。

Honda歩行アシストの驚異の能力を支える機能は「測定と操作」にある。股関節の角度を感知するセンサーを内蔵しており、足を振り上げる力である「屈曲」と後ろにける力である「伸展」が測定できる。測定したデータはタブレットで確認でき、個人の症状に合わせて設定を操作しサポートする力を変えられる。

同社の伊藤寿弘さんは「一度(Honda歩行アシストで)訓練をすると、しばらくの間その感覚が(使用者の)体の中に残っている。・・・その残っている感覚が杖なしでの歩行を可能にしている」と解説する。

番組では特に指摘されていなかったが、この機器のもう一つよい点は、装着が簡単なことだ。実は同様の歩行アシスト機器は他にも先行して市場に出ているのがある。しかし装着が大変でスタッフ2人かかりで20~30分程度も掛かる。リハビリ施設は人手不足なのに却って手間が増えてしまうので、導入拡大につながっていなかったのだ。しかしこのホンダの機器はよい。2015年11月から、病院や高齢者施設を対象にリースを始めているそうだ。

同社が新たに挑んでいるのは、病気や障害で歩行困難な子どもたち用のHonda歩行アシストの開発だ。子供用アシストの実用化は困難を極める。脳性まひの男子のように、「歩くという感覚そのもの」が欠如している子ども相手では、「大人用のHonda歩行アシストをそのまま小さくすればいい」という単純な問題ではない。

中学から高校生にかけては、身長が伸びて体重も増える。その結果として、骨は伸びるが、筋肉は伸びずに膝がかたくなる。そのため、中学生時代にどれだけ歩き続けることができるかが、将来の歩行を可能にするための分れ目になるという。脳性まひの男子を含め、残された時間が少ない患者は世に多い。子供用アシスト実用化に向け、彼らの厳しい闘いは続く。

もう一つ、膝関節痛に悩む人たちのための人工関節を製造する帝人ナカシマメディカルが、海外進出へ向けて奮闘する姿も紹介されていた。

大型船舶用スクリューの研磨で培った技術を応用している。訓練次第で正座ができるようになるなど、性能的には外国製を上回るものだが、既に外国製を導入した病院ではそれに伴う機材一切を入れ替えなくてはならず、なかなか国内シェアは上がらない。

そこで同社は思い切って仏教国ミャンマーに進出しようとしている。寺院でお守りする際に正座したい患者が多くいるからだ。まずは実績を作りたいと、患者第一号の手術に着手する様子が放映されていた。世界に打って出る、その心意気やよし。