BPM経験者が語る日本の現場・現実

BPM

首都圏にもドカ雪が降って交通が混乱した余韻が今日もまだ残っている。お陰で予定が変わり、その合間を縫ってこのブログを更新している。

先週、最近BPMを実践した会社にてインタビューをする機会があった。BPMに取り組むことになった最初のきっかけは、情報システム部門においてBPMに強い興味を持つリーダーが就任したことで、その後優秀なチームメンバー(とはいえたった2人)を社内から一本釣りし、「とにかく進めよう」という機運になったとのこと。

もちろん、一夕一朝に変わったわけではない。それまで「言われたことを受け身にしかやらない」どころか、かなりの部分を現場任せに放り投げていた情シスがまず現場と対話するようになり、「ユーザー部門が本当にやりたいことは何か教えて欲しい」「我々ができるだけ支える」と全くスタンスを変えたそうだ。

最初は疑わしい目で見ていたユーザー部門も、現場でニーズを拾い上げてこつこつと実現していくうちに(これはBPMツールも活用したから可能になったと思われる)彼らを信頼するようになり、改善サイクルを一緒に動かしていくスタンスに徐々に切り替わっていった、とのことだった(嬉しいことに、小生の著書も多少は役に立ったようである。この事例は多分、6月のBPMフォーラムで発表されるだろう)。業務改革が成功する際にはこんなストーリーが生まれるものである。

同社のBPMもまだ道半ばである。ここまでの初期プロジェクトは協力度の高い管理部門が現場だったが、ここからはもっと日常業務に追われている営業部門が相手なので、手ごわそうである。そのためメンバー補強が課題とのことであったので、若干のアドバイスもさせていただいた。それにしても、こうした成功例がもっともっと増えて欲しいものだ。

同時に、この事例の中心人物のコメントに少し複雑な思いが募った。この事例が記事で取り上げられた関係で、彼は色々なユーザー企業の人から「話を聞かせて欲しい」とコンタクトされ、可能な限り応じているそうだ。多くの人が話を聞いたあとで「そこまでしなきゃダメなのか」と少々尻込みするそうだ。しかし受け身でなく現場に入り込んでニーズを汲み取るなんていうのは、昔は情シスの人間なら当たり前にやっていたことなのである。

また、ユーザー企業の情報システム部門の人が「業務要件を明確化するのに業務フローを可視化することが効果的だと思うが、実際には実践できていない」とこぼすケースが多いそうだ。どうやら一つにはSIerのSEやコンサルタントが積極的でないようだが、もしそれが効果的と認識しているなら積極的に自ら実践すべきだろう。

小生は自著「BPMがビジネスを変える」や過去の講演にて主張してきたように、ユーザー部門の意図を誤解なく伝えるために、業務フローをどう変えるのかを可視化(ビジネスプロセスのモデル化)して伝えることが業務要求定義の基本だと確信している。これは世界の常識でもあり、日本のSI産業は明らかにサボっているのである。