驚異の冷凍技術”CAS”は地方の光になるか

ビジネスモデル

ForbesでMr. Freezeと呼ばれた人物、アビー株式会社社長・大和田哲男氏が幾つかのTV番組で紹介されているのを観た。年商15億円の中小企業ながら、世界20カ国以上に特許を持ち、欧米諸国だけでなく、アフリカや南米からも引く手あまたの状態という。まさに中小企業の星である。

大和田氏が開発したのはCAS=Cell Alive Systemと呼ばれる冷凍技術で、細胞を生きたまま凍結できるという、それまでの常識を覆すものである。従来の急速冷凍では、肉や魚を冷凍した際に、細胞に含まれる水分が細胞膜を破壊し、旨味や水分が抜け出してしまう「ドリップ現象」を避けられなかった。しかしCASでは磁気を駆使して急速冷凍することで、解凍しても細胞を壊さず、「ドリップ」の出ない冷凍方法が開発された。しかも鮮度を落とすことなく5年以上もの保存も可能だという。

実は小生は別の技術の可能性を調べていたので、このCASがこんなにコスト安に、非常に有効な冷凍システムを成立させることに感動すらしている。

大和田氏はCAS冷凍技術を地方へ持ち込み、全国への流通販路を開拓している。島根県の隠岐島では獲れたての生ガキや白イカを凍結する工場を設立、すでに東京のすしチェーンへの流通をスタートさせた。既に大手スーパーのオーケー・ストアや大手百貨店でも採用されているようだ。

大都市・東京から遠い地方では、農業・漁業などの産物を、鮮度を保ったまま都会に流通させることができず、ある意味、大きな機会損失が生じていた。このシステムにより町には生産工場という職場ができ、活気が蘇り、さらには町を出た若者も戻り始めているようだ。さらに震災被害を受けた岩手県・大船渡には無料で提供されており、地元漁業の復興に貢献しているという。

日本の田舎を変え、日本の社会構造変化すらもたらしてくれそうな起爆力を感じる。もちろん他にも医療分野など色々とポテンシャルがあり、楽しみなニッポン発の技術である。