顔認証技術の発展と危惧

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国民を熱狂の渦に巻き込んだラグビーW杯の終了からはや2週間。その大会期間中に実は色々な先端技術の試行が行われていました。その代表的なものが「顔認証」技術です。

 

具体的には、大会関係者と予め登録された取材陣が球技場に「顔パス」で出入りできるシステムが使われていました。このシステムが設置されていたのは会場としては東京スタジアムと横浜国際総合競技場の2か所です。どうやら問題なく機能した模様です。

 

そしてこの技術はさらに運営関係者が増える2020年の東京オリンピック・パラリンピックでも本格的に使われることが決まっています。これによりニッポンの先端技術の凄さが広く世界に宣伝されることでしょう。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33885740X00C18A8MM0000/

 

ちなみにNECの顔認証技術は現在、世界最高水準にあることが実証されています。世界的権威のある米国国立標準技術研究所(NIST)が昨年実施した最新の顔認証技術のベンチマークテストで、一昨年のベンチマークに続き、5回目の第1位を獲得しています。

https://jpn.nec.com/press/201910/20191003_01.html

 

この技術の用途開発とマーケティングに関しては弊社も少しだけですが関与したので、この活躍ぶりには嬉しい限りです。

 

とはいえ、実は将来的にはこのダントツ振りも安泰ではありません。というのは、中国勢がひたひたと迫っているからです。

 

現時点では認証精度の点でまだまだ2位以下との差は小さくありませんが、この分野の技術競争は激しく、そして純粋な方式に関する技術開発だけでなく、深層学習の活用が欠かせません。そこでは実証データ量もその精度向上には重要なカギを握っています。

 

そう、中国では圧倒的な人口というベースがあり、しかも大都市の街角のそこらじゅうに防犯カメラが設置されて市民を監視するという「監視社会」です。しかも市民の側は監視されていることに寛容です(そもそも政府に反発することすら許されない社会です)。つまり圧倒的に実証データ量を集めやすい素地があるのです。そのため、この数年間の中国系ハイテク企業の顔認証技術の向上には目覚ましいものがあります。

 

だからこそNECとしては現在の技術的優位性を維持するためにはあらゆる機会を通じてもがき続けなくてはいけないという切迫感があるのでしょう。ラグビーW杯、東京オリ・パラという一大イベントでの利用に向けて積極的に活動している上に、インバウンド観光などでも応用したい意向のようです。

 

「特定政府のエゴ」のためではないニッポンの技術が、「世界の安心」に貢献することを願いたいですね。