電子書籍は全く想定外の「異物」として成長中

ビジネスモデル

この土曜日に、電子書籍に関するミニセミナーがあり、もともと興味を持っている分野なので、出掛けていった。参加者が極端に少なくて驚いたのだが、講師の人と綿密に意見交換できたので、却って充実できた。得られた知識もそれまで漠然と思っていたこととはかなり異なり、非常に新鮮だった。

講師はこの半年ほど電子書籍の出版に特化したコンサルティングを実施してきた方で、電子書籍市場の現状に詳しい。その人が断言するには、日本の電子書籍市場は米国のそれとは全く異なっていて、電子書籍用プラットフォーム(Kindle, Leader, Kobo)上での販売は完全にコケており、汎用プラットフォームであるiPadやAndroid Tablet上での販売も苦戦しているとのことである。売れているのはスマホ(iPhoneやAndroidスマホ)をプラットフォームとする場合であり、従来の携帯文化の延長に過ぎない模様だ(とはいえdl数は飛躍的に伸びてはいる)。

コンテンツに関しては、写真集や小説のようなじっくり味わうようなジャンルは総スカンのようだ。それに300円以上の電子書籍もダメ。だから大手出版社のコンテンツは総崩れだという。

ではどんなコンテンツが売れているのか。ズバリ、自己啓発、ビジネス関連、マネー、恋愛、アダルトものだという。最後の2つはガラパゴス携帯の時代には大半を占めたそうなので、その延長上なのだろう。上位3ジャンルはあまり「濃い」ものではなく、「へー、そうなんだ」程度のお役立ち感が重要で、大半が1タイトル100円というものらしい。

主な読者層は圧倒的に20~40代の男性サラリーマン(これは予想通り)。朝夕の通勤途上、ランチ時や夜の飲みネタ探し、あるいは帰宅してから何かの合間に、自分のスマホで読む。言い換えれば、スキマ時間の暇つぶしに軽く流し読みするというスタイルなのだろう。

では女性読者はいないのか。講師の方によると、女性は無料コンテンツしかダウンロードしないらしい。唯一の例外(有料dl)はボーイズラブもの、アダルトものだという(どうやって調べたのかは聞かなかったが…)。小生が知っているタブレット端末所有者の大半は40~50代のIT好きな管理職クラスだが、彼らは絶対数からいえば少数派であり、しかもまだタブレット端末での読書が主流ではないので、納得できる分析結果だった。

講師の方はこうした分析を示した上で、今の電子書籍に関しユニークで面白い見かたを示した。これはブログで公開すべきでないと思うので伏せるが、非常に的確なものだと感じたし、大いに参考になった。

それにしてもユニークなケータイ文化を持つ日本における電子書籍は、当初関わった人たち(電機メーカー、ITベンダー、出版・印刷業)の思惑とは全く違う、想定外の「異物」として育ち始めているようだ。