電動バイクの普及の鍵を握るのは何か

ビジネスモデル

一時期注目された電動バイクが下火になっている。2011年では20社あった電動バイク専業メーカーは現在2社だという。その普及の鍵は価格であり、価格を下げるには大量生産が必須なために台数が必要であり、しかし台数が捌けるためには思い切った低価格が必要という「鶏と卵」の関係である。結局、コスト低減のためのボトルネックである電池の製造コストをどう低減するか、普及のための大量適用領域をどこに見出すか、という2つの課題が大きいとみる。

7月15日(火)に放送されたWBSの特集でも電動バイクを採り上げていた。最初に登場した、電動バイク「もたぽんこ」はかわいいミニバイク。開発した埼玉県入間市オリエンタル青梅R&Dセンターの荻巣荒一朗社長は埼玉県松伏町のテコと、業務用の電動バイク「テコ」を共同開発した。しかし営業上は伸び悩んでおり、デモで持ち込んだ営業先の新聞販売店には価格の問題を指摘された(試乗の反応はよい)。

「e-Let’s」を発売しているスズキ本社の真柴岳彦氏は「バッテリーの価格の高さを乗り越えなければいけない」と話す。「EC-03」を発売しているヤマハは2015年までに原付バイクと同程度の価格の開発を進めるとするが、高いハードルだろう。ホンダは業務用の電動バイクの生産販売を中止した。

茅ヶ崎市で電動バイクを扱うデンドーモータースでは橋本幸一社長が登場。震災がきっかけで売上が伸びたが、品質のクレームに対応できなかった企業が撤退したことを指摘した。「簡単に参入し、撤退していたら普及しない。大切なのはアフターフォローの体制だ」と。

一方で、元気な電動バイク・メーカーがある。東京・渋谷区のベンチャー企業、テラモーターズである。2012年度には約3,600台を売り、シェアトップを独走している。事業開発グループの加藤真平氏は、販路だけでなく修理店などの開拓も並行で行ったことが効いているとした。

同社の「SEED48」は10万円を切る価格で、家電量販店で販売されている。同社によると、当初は目新しさがウケて都会で売れたが、今ではガソリンスタンドの減少した地方で需要が増えている(7割が地方らしい)。自宅で充電できるのが便利で(1回の充電で約30円)、遠方に行くのは不安だが、近所の田んぼに通う、といた使い方である。さらにテラモーターズは走行距離が伸びた「A4000i」を発表。徳重徹社長は、ニーズが拡大しつつある宅配業界で普及すると語る。テラモーターズをはじめとして幾つかの会社は、3輪タクシーの電動化を政府が後押しするフィリピンを中心として、アジア市場にいちはやく進出しつつある。

あとはやはりコスト低減の競争だ。4輪EVメーカーのテスラモーターズのように、(電動バイク専用品ではなく)汎用品の電池(またはその部品)を使って量産化によって電池コストを大幅に低減する、といった知恵の勝負になるのではないか。