障害者の腕の代わりになる夢のロボットアームができた

ビジネスモデル

12月8日(木)放送の「夢の扉+」は「“夢のハイテクアーム”で願いを叶える!~世界初の技術が生んだ生活支援ロボットアーム~」。ドリームメーカーは産業技術総合研究所/ライフロボティクス/ユン・ウグン(尹祐根)さんという在日4世の方。

今年11月の国際ロボット展で絶賛された世界初の技術。それがライフロボティクスの技術責任者、ユンさんが開発した最先端のロボットアームだ。つかむ、持ち上げる、ひねる、といった、人の腕、ひじ、手首の複雑な動きを再現する、福祉用のロボットアーム「ラピューダ」。腕や手が不自由な人が、「水が飲みたい」といった日常の動作を、介護の手を借りずに、自分のペースでできるよう支援しようと、実用化を目指している。

言葉にすると既にありそうな気がするが、人間の腕のような複雑な動きをできるロボットは今までなかった。例えば工場で使われる溶接ロボットなど、そういった機能に近いものは随分デカく、腕部分も太く、重い。障害者が自らの腕として抱えていけるような存在ではなかったのだ。

もともとユンさんは、宇宙や原子力発電所で活用するロボット工学の研究者。産総研で福祉用ロボットアームの研究を担当することになったとき、首から下をほとんど動かすことができない、高見和幸さんに出会った。手が使えない不自由さを目の当たりにしたユンさん。「グラスを傾けながら、コチンと乾杯したい」という、高見さんの”ささやかな願い”を叶えることを約束する。目指したのは、コンパクトで、車椅子など、どこにも取付られる、複雑な動きのできるロボットアームだ。

しかし、実はこれが簡単でなく、幾度となく壁が立ちはだかった。試行錯誤の末に思いついたのが、舞台の昇降に使うジップチェーンリフター。2本のチェーンがジッパーのようにかみ合い、まるで一本の棒のようになり重いものを押し上げる構造だ。その発想を基に、伸縮自在のアームを構想した。そして自らベンチャー企業を立ち上げたが、10社回っても協力してくれるモーター製造企業が見つからない。心が折れそうになったが、障害者たちのことを思い、これで最後、そう思って訪ねた11社めの会社、「オリエンタルモーター」が協力してくれることになった。協力者も出てきた。

オリエンタルモーターの技術者も、意地でも困難を乗り越えようと、工夫を凝らす。国際ロボット展を前に腕の伸縮トラブルも出てハラハラさせるが、何とか間に合わせることに成功。冒頭の通り、福祉関係やロボット研究者など、来場者から驚きと称賛の声が挙がる。開発成功の報を知らせるため、ロボットアームの実物を携えて、ユンさんは高見さんのもとへ行き、「乾杯」をしてもらう。今、ユンさんはこのロボットアームを世界じゅうで使ってもらおうと奮闘中だという。

ユンさんは言う。『障がいがある人の“我慢”を少しでも減らし、ロボットアームを使って、「あれをしたい、次はこれをしたい」と、夢を描いてもらいたい』『壁を乗り越えられないのはベストを尽くしてないから』と。自らを奮い立たせるユンさんの開発魂を観た。