誰も語らなかったアジアの見えないリスク

グローバル

『誰も語らなかったアジアの見えないリスク 痛い目に遭う前に読む本』出版記念シンポジウムに参加した。
http://pub.nikkan.co.jp/html/asiarisk20121106

本の趣旨は「中国・アセアン地域を中心にはびこる不健全な実態やビジネス・リスクに無防備な日本企業の実情を明かし、対応策を提案する本。マクロ経済の動向に伴うリスクや法務など、業種共通のリスクを取り上げ、リスクの洗い出しによる管理手法を解説している」とのこと。興味があったので仕事の合間に出席した。

ビジネスプロセス革新協議会からの案内で知った催しだったが、主催は「株式会社せおん」という編著者・越純一郎氏の会社であった(氏は事業再生で著名な方で、NHKドラマ、映画にもなった小説『ハゲタカ』のモデルらしい)。出版記念シンポジウムということで本の販売もしていたが、基本的には著者たちの宣伝イベントだったようだ。

編著者である越氏はアジアでのリスクを幾つか挙げて、「安易なアジア進出で騙されないように」という警告を発したかった、とコメントされていた(でも今年には「いま進出しないでどうするアジア!」と煽るセミナーも開催されていたようだ)。特にジェトロ・商工会議所・大手日系銀行などに相談しても意味がないこと、日本企業の甘さが法務リスクへの対処に現れていること、現地での日本人コンサルタントに騙されるパターンなどを指摘されており、その通りと感じた。ご本人は自身のビジネスをこれからアジア展開されるそうだが、その際には安心して組める相手がいる分野、自分達しかできない強みがあることなどを条件に挙げており、「アセアン投資ファンド」(多分、氏の次のビジネスなのだろう)への期待を示していた。

次に講演されたのがタイ在住のコンサルタント・楠本隆志氏。この方も正体がよく分からない感じがしたが、「私に頼めば皆金持ちにしてあげる」と豪語するなど、越氏のいう「現地での日本人コンサルタント」そのものにあてはまる胡散臭さはあったが、確かに迫力はあった。幾つか日本企業の進出の失敗・成功事例を挙げていた。例えば現地採用の経営者に金を持ち逃げされたり会社を乗っ取られたり、出入り業者に騙されてぼったくられたり施設工事に延々と時間と費用が掛ってオープンできなかったり、25.5%以上握られている現地パートナーに増資を邪魔されて結局乗っ取られたり、といった「怖い」事例が幾つか出ていた。「こんな羽目に陥らないためには現地事情に通じた自分に相談しなさい」という訳である。日本の中小企業のオッサン達に対しなかなか説得力があったのではないか。小生のように友人である現地人の人脈で筋のよいパートナーを探してあげるというのと似た文脈であると感じた。

他の講演者は、アジアでの電力投資ファンドの井上氏、GCAサヴィアンの福谷氏、元投資銀行で現・アジア戦略アドバイザリー・杉田氏、ビジネス・アドバイザー・高木氏(元サービサー)などの金融マンばかりであった。こうした日系金融マン連中に海外進出の戦略コンサルができるとは思えないのだが…。でも現地での法人設立手続きだけで法外な料金をふんだくる連中よりはましなのだろうとも思った。少なくともブームに押されて(戦略なしの)安易な進出をすることのリスクを感じてくれるだけでもよいことである。