誘拐に基づく子供の人身売買が広がる中国社会とは

グローバル

4月21日(火)放送のクローズアップ現代は「“行方不明児20万人”の衝撃」。いくら中国でもこんなことが現実にあるのかという、本当に驚愕の話です。

今、中国では子どもの誘拐が大きな社会問題になっています。行方不明になる子どもは年間20万人といわれます。でも先進国やら中南米で想像されるような「身代金目当て」の犯罪ではありません(もちろん、犯罪です)。

犯罪組織に誘拐された子供たちは、農村部に労働の担い手や後継ぎとして売られるケースが多いのです。つまり農村部では老後の社会保障がぜい弱なため、子供に恵まれなかった普通の人々が老後の支え手として子どもを買うのだというのです。5年分の年収を必要とするため、借金をする人が多いそうです。

このニーズがあるため、他国に例をみない特殊な誘拐ビジネスが成立するのです。しかもなかなか摘発されないそうです。地方政府・警察と癒着しているケースが多いためだそうです。何という国でしょう。

しかもさらに驚きなのは、中国の法律では、誘拐犯は罪に問われますが、それを依頼し子供を買った側は、逃げようとする子供を監禁したり暴力をふるったりしなければ、罪に問われないのです。実際、番組では子供を買った人が登場し、子どもを買わなかったら老後が成り立たないと主張していました。

当然、自分が奪った子供を奪われて悲しむ親が出現するのは自明ですが、そうした罪悪感は見えませんでした。農村の人たちはむしろ子供を買わざるを得ない人に同情的でさえありました。人身売買なのに、まるで高額なペットを買うような感覚なのでしょうか。

さらにびっくりしたのは、自分が買われた子供だということを知っていて、それでも「育ててくれた養母に感謝する」という息子が登場したことです。彼は都会の工場で働いていて、自分の生活を切り詰めて、田舎に住む養母への仕送りを欠かさないそうです。そして生母を探し続けた結果、息子を奪われた母親は悲しみのあまり失踪して行方不明なのだそうです。この息子は悲しんではいるようですが、養母がその原因となったとは考えないのでしょうか。不思議です。

息子を誘拐された父親たちは、インターネットで情報提供を呼びかけるとともに、自ら各地を回ってわが子を探し続けています。上海などで捜査強化と情報提供を訴えている人たちも映されていました。誘拐根絶に乗り出したNGOの取り組みなども取材されていました。

中国社会に広がる歪みの背景は、経済発展から取り残された貧しい農村での貧しい社会保障制度です。都会だと月30000円の年金が、農村では月1500円ほどしかもらえないそうです。さすがにこれでは中国の田舎でも生活していけません。

だからといって人様の子供を誘拐させてまで老後の面倒をみさせるため子供を獲得したいというのは、自分さえ良ければいいというエゴそのものです。いくらエゴの塊の中国人でも許されていいとは思えません。こうしたニーズがある限り、犯罪集団が暗躍します。

田舎であろうと社会保障制度を充実させること、誘拐されたと疑わしい子供を買った側も厳罰に処すこと、当然ながら捜査を強化して摘発された誘拐犯連中にはさらに重大な刑罰を処すことなどは最低限やって欲しいものです。日本人駐在員の子女が誘拐されるような事態は勘弁して欲しいものです。まともな社会とは元々思っていませんが、共産党の存在意義として民が安心して生活できるようにする義務があるはずです。