詐欺師たちには神も仏もない

ビジネスモデル

相変わらずお年寄りを狙う詐欺事件が後を絶たない。振り込め詐欺の手口もどんどん多様化・悪質化するようだ。いつも思うのだが、こうした詐欺に使う知恵があるのだったら、まともな稼ぎのために使って正々堂々と稼げばいいのに。それだけの頭脳があればきっと大抵のことができるだろうにと思う。

最近のテレビ番組で少々種類の異なる詐欺を扱うケースを観た。「所さんの大変ですよ」というお気に入りのものである。10月13日(木)に放映された「激安ネックレス!? 買っちゃったらその後…」によると、開運ネックレスを880円で買ったら結果として20万円取られていた、さらに言われるまで騙された事に気づいていなかったという。

詳しいプロセスとしては次の通りだ。

雑誌の広告で見たのがきっかけでネックレスを880円で購入。するとネックレス業者から電話がかかってきて効能などが説明される。毎週のように電話で話し心が打ち解けると、業者から祈祷をしたほうがいいと薦められる。女性は業者の言葉を信じ祈祷料20万円払った。すると警察から電話があり騙されていたことがわかったという。つまり犯人は会うこともなく女性ばかりを信じ込ませていたというのだ。

捜査にあたった京都府警察本部によると、今回の事件は開運商法詐欺という犯罪で、ネックレスが顧客を釣るためのエサとなっていた。ネックレスを送付する際「開運できる使い方を電話で伝える」とした注意書きを同封し、購入者と連絡を取り、悩みを聞き出す。ニセの僧侶役を用意し、定期的に連絡を取ることで購入者の警戒を解いていく。さらに相談に乗りながら購入者の懐具合を探り、引き出せる額を値踏みできたところで悩みを和らげるための祈祷を勧める、という段取りだ。

今年2月に逮捕されるまで、詐欺グループは300人以上から約1億6千万円をだまし取っており、被害者の多くは何も知らずに支払っていた。そしてこの被害者は9割が中年女性だという。

今回の事件には、詐欺グループだけでなく本物の寺も関わっていたという。警察の話では、犯人グループは寺にビジネスパートナーの話を持ち出し取り込んだという。関わった寺は、詐欺グループの指示で寺名義の口座を3つ作り、通帳などを渡していたといい、さらに被害者のために祈祷を行い祈祷料の5%を受け取っており、寺自身もだましていた認識はなかったという。

今回の背景として、資金繰りに悩み相談を寄せる寺は珍しくないという。寺離れが進み檀家の数が減少、僧侶を呼ばずに葬式を済ませる人が多いことから寺の収入は減る一方で、6人に1人の住職が教員や公務員などを兼業しているという。

詐欺に関与した寺は書類送検された後、悪質性が低く反省しているため起訴猶予処分となったという。こうした寺の窮地に詐欺グループが付け込んで、甘い話で仲間に引き入れたというのが事の真相のようだ。お坊さんまで詐欺の手段に引き込むというのは、なんともやるせない世の中だ。