被ばく線量偽装

ビジネスモデル

何とも呆れかえるニュースが続く。今度は原発事故処理に絡む、被ばく線量の偽装である。

東京電力福島第一原子力発電所の事故の収束作業で、工事を請け負った会社(ビルドアップ社)の役員が、作業員に対して、線量計に放射線を通しにくい鉛のカバーをして被ばく線量を少なく装うよう指示していたことが判明したとのことだ。同社社長によると、去年12月、役員が作業員に対して、各自が身につける線量計に、放射線を通しにくい鉛のカバーをして被ばく線量を少なく装うよう指示したということだ。朝刊では役員は否定していたが、夕刊では事実を認めたようだ。

原子力発電所で働く作業員の被ばく線量については労働安全衛生法で、年間50ミリシーベルトまでと上限を定めている。上限を超えた作業員は、原発の管理区域で働くことはできず、違反した場合は、事業者に6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が課される。会社とすると折角仕事もあり従業員もいるのだから、みすみす仕事を逃したくないというのが本音なのだろう。

役員の指示に対し、作業員の数名が反発し、その作業を「降りた」そうだ。当然だろう。しかし他の作業員はこの理不尽な要求に従ったようだ。哀しい話である。後々被ばくによる重病に罹っても、こうした会社が面倒を見てくれるとは思えない。

役員は事実を認めながらも、「強制はしなかった」と主張しているそうだが、そのやり方でなければ同社での仕事はさせなかったというから、半強制と云えよう。この役員は「自分は割のいい線量の高いところの仕事を一杯したい。そのためには線量を誤魔化すくらい仕方ない」といったニュアンスで説明したようだ。しかしこの話には2つの倫理上の欺瞞がある。

1つは、会社の役員という立場でありながら社会的ルールを破るようにそそのかしたということ。しかも「金を稼ぐためには仕方ないじゃないか」という言い方で。これは、プータローの人達を集めて生活保護を受け取らせておきながらタコ部屋に閉じ込めておく、「貧困ビジネス」の連中と同列である。

もう一つは、「自分もやる覚悟があるから、お前たちもやるだろ?」と仲間的に誘っている形を装っていること。この役員は50代だが、作業員の大半は30~40代。それだけにガンになった場合の進行は速い。うっかりのせられてしまうと後で臍をかむ。世の中にはこんな話がよくある。自分の頭で考えねば。