自由貿易に賭けたNZの戦略性は大いに参考にすべき

グローバル

TPPの影の主役であるニュージーランド(NZ)が注目を浴びている。昨年、仕事で首都・オークランドを訪れた際にはその綺麗な景色に感嘆し、その国家戦略が反映した施策にも感心したものだった。最近続けてメディアで取り上げられていた際に、またその時の感慨を思い出した。

1月25日の放送は「今、注目すべき国 ニュージーランドは 日本にとって敵か味方か?」。まずは観光立国としての姿が描かれていた。バンジージャンプなど大自然の中で体験できるアクテビティを売りに、260万人もの外国人観光客が訪れるという(人口はたった465万人)。『ロードオブザリング(ROR)』や『ラストサムライ』などで成功したように、国際的な映画撮影を誘致することで観光への動線を張る戦略もヒットしている(小生が訪問した際にはオークランド空港にはRORのオブジェが天井を占めていた)。

次が国旗変更問題。現政府が国旗お変更を推進しており、国を挙げての議論を呼んでいる。番組内で退役軍人たちが国旗変更を阻止すべく集会を開いていたが、若い世代は変更になびいているようだ。確かに今の国旗は豪州と区別がつきにくく、NZのオリジナリティやID(本来は英国人の国ではない)が感じられないので、今年3月に出る結果は「変更」となる可能性が高いと思う。

最後は、NZが誇る世界一の酪農の話題。北海道の大学で酪農を学ぶ学生たちが訪れていたのは農場体験視察。普段は放牧で草を食ませる方式で、乳が張ると牛自身が搾乳施設にやってくるように飼い慣らされている。何十頭もの牛を飼う広大な農場をたった一人で経営しているのだ。搾乳施設は日本ほどゴージャスではないが、低コストで合理性が一貫している。これでは日本の酪農家のチーズやバターは太刀打ちできないと納得してしまった。

最後に、放牧で牧草のみを与えられ育てられる低コストでヘルシーな赤身肉を日本に輸入すべく現地で準備している伊藤ハムの様子が描かれていた。TPP後の海外展開を見据え、ニュージーランドの食肉加工会社を子会社化。低関税での牛肉の輸出拡大を狙っているという。日本市場に向けて効率的に霜降りを入れるための工夫も始まっており、いずれ豪州のWagyuとともにNZの霜降り牛肉が日本市場を席捲する日が遠くないと感じた。

一方、昨日(2/4)のWBSでは「TPP8億人経済圏 誕生前夜」というテーマの中でNZの立ち位置と現状が描かれていた。NZはTPPの原型となる自由貿易の枠組み“P4”の立ち上げをリードし、世界でもいち早く国内経済の自由化に取り組んできた。関税撤廃措置で輸入品が安くなり、日産やトヨタの工場が90年代後半に工場を閉鎖するなど国内の製造業はほぼ全滅状態だ。一方、先に触れたように乳製品は輸出トップを誇るNZの主力産業。しかし現実は、世界的な供給過剰による国際価格の下落により苦しい状況にあるのだ。だからこそTPPによる輸出の増加に期待を寄せ、一方でTPP交渉の山場で見せたように、少しでも有利な条件を得ようと必死だったのだ。非常に納得できる話だった。