自動運転技術の進化と重い課題

ビジネスモデル

10月23日(水)のクローズアップ現代は「ここまできた自動運転 社会はどう変わるのか」。人がハンドルやアクセルを操作しなくてもクルマが自動で運転する「自動運転車」についてどこまで来ているのかを解説してくれた。解説者は電気通信大学の新誠一教授。ちょっと前にもBIZ+サンデーで特集していた内容(これは下記のURL参照)とダブる部分が結構あったが、全体としてはすっきりとまとめてくれていた。
http://pathfinderscojp.blog.fc2.com/blog-entry-257.html

「自動運転」は不注意による事故の減少や渋滞の緩和につながると期待されている。今月14日から東京で始まったITS(高度道路交通システム)世界会議では、最先端の技術が一同に発表されている。その内容がこの番組には反映しているようだ。トヨタは運転支援システム、ホンダは自動駐車システムなどを発表。日産は、カメラが信号を認識して停車したり、無人で空きスペースを探して駐車したりするなどの技術を搭載したクルマを、いち早く2020年には販売する見通しだ。

さらに、各メーカーが研究開発に力をいれているのが、その核となる「人工知能」である。この研究が進めば、運転者は手放しでも目的地に着くことができる。IT技術でリードするグーグルを中心に先行するアメリカ勢、官民挙げて巻き返しを図るドイツ勢など、次世代の覇権を賭けた国家間競争が熾烈さを増している。

最も注目されているのは、事故防止と渋滞解消である。事故の93%は人間の判断遅れ・ミスなので、人間が運転するよりAIに運転させたほうが圧倒的に事故を減らすことができる。人間と人工知能の判断が食い違う場合、後者を優先するほうが事故を回避するのには正しい判断になるという。瞬時の認知能力と判断の精緻さにおいて、人間は太刀打ちできないだろう。また、渋滞解消に関しては車間距離を一定以上に保つことが有効だが、それには自動運転が有効なのは間違いない。人間は単調な運転では注意力が激減するし、速度認識も正確ではないからだ。

Googleは既に試作車を作って公道実験で50万キロ以上を走らせているので、実用化に一番近い(4年以内という)。完全な自動運転システムが実用化されれば、子供でもお年寄りでも、飲酒した人でも運転できるという大胆な発想を担当者がコメントしていた。

各自動車メーカーも負けずと人口知能による自動運転の実現を目指し、開発に力を入れている。特にフォルクスワーゲンは逸早くシリコンバレーに拠点を構えて、人口知能に強いタンフォード大と共同研究を進め、プロドライバーの運転パターンを取り込もうとしている。そしてBOSCHなどドイツの自動車部品メーカーと綿密に協力して進めているようだ。

トヨタも運転支援のみならず自動運転機能を実現するため技術開発を進めているようだが、なにせ公道実験を重ねる必要がある。この点、米国と違い日本での公道実験は許されておらず、隔靴掻痒の趣がある。これは日本メーカーにとっての課題だ(だから多くは米国で進めているようだ)。

もう一つ、やはり一番恐ろしいのは人口知能であるコンピュータが悪意ある存在(ウィルスなど)に乗っ取られて、正しくない判断をしてしまう可能性である。それを極小化するために、どういったセキュリティを確立できるか、ということだろう。