綺麗な水とBOPビジネスを作りだすニッポンの技術

グローバル

3月19日放送の「ガイヤの夜明け」は「世界の子供を救う!ニッポンの技術」というタイトル。水事情の極端に悪い途上国での取り組みを続ける水の浄化剤メーカー、日本ポリグルとその会長、小田兼利氏(72歳)の活動を紹介していた。

安全な水を利用できない地域では川や池の汚れた水を飲用水として利用しているせいで、感染症などの病気になる確率も高くなる。そうした国では平均寿命は低く、子供の死亡率は高くなる。5歳未満の死亡率が世界で最も高いのが、無政府状態が続くソマリアである。

難民キャンプでは飲み水が不足し、飲食に使う水は近くの川の泥水を使用している。しかし、その川は汚濁し、しかも近隣の工場廃液も多く混じって気味悪く光る泡さえ浮いている。そのせいで病気になる子供も後を絶たない(大人も同様)。国連機関、IOM(国際移住機関)の依頼により、日本ポリグルの小田会長みずから、いまだ銃声の飛び交う現地へ乗り込み、手造りの浄水設備を作ったのである。

日本ポリグルの製品は納豆菌などから作った浄水剤である。汚れた水であっても、その浄水剤を混ぜてかき混ぜると、余計なものを凝固・沈殿させ、残った水はほぼ透明で安全なものとなる(この様子を見た現地の子供達が「アラ不思議」という顔をするが、番組を観ている我々も同様だ)。それをろ過すれば「おいしい水」になってしまうのである。

ポンプで川の水を汲み上げ、第1の水槽を満たす。そこに日本ポリグルの浄水剤を加えかき混ぜる。その水を石や砂を詰めた第2の水槽でろ過し、最後に第3の水槽で塩素を加え、そこの蛇口から出る水は立派な飲み水になっている。

安全が十分確保できないソマリアの難民キャンプでは、当面は日本政府が日本ポリグルの浄水剤を無償供与することになっている。しかし先行するケースでは、BOPビジネスとして自律的に回り始めているものもある。

2008年のハリケーンの被害で水事情が悪化したバングラデシュを支援するためボランティアで乗り込んだ小田会長は、やはり現地に手造りの浄水設備を作った。しかしその半年後、現地を再度訪れると、浄水設備は全く使われなくなっていた。なんと金属でできた蛇口が盗まれたからだ。

管理する人間がいないことが主な原因だと見抜いた小田氏は、単なる水の支援ではなく、水ビジネスとして成立させ、現地スタッフに給料を支払う仕組みにする必要があると考えた。設備の管理人兼運搬人(ポリグルボーイ)として男性社員を、そして料金回収人として女性社員を雇い、現地の人でも払える値段で安全でおいしい水を提供するBOPビジネスを開始したのだ。

それから4年以上が過ぎ、今ではポリグルの水システムはすっかり現地に定着。ポリグルの社員は現地製造業以上の給料をもらえ、人数もどんどん増えている。県知事の要請で地域も県全体に拡大しようとしている。最初の取り組みを始めた村では、村人から口々に小田氏への感謝が伝えられた。ニッポン人として誇らしい限りである。日本の技術が求められ、BOPビジネスとして現地から感謝されながら継続できる、こんなケースはまだまだ他にもあるに違いない。