素材はイノベーションの只中にある

ビジネスモデル

日本が強みをずっと発揮できている産業というのは実はそう多くはない。その限られた産業が素材産業である。しかしその産業内では絶えることなく激しい競争と新陳代謝、そしてイノベーションが繰り返されている。

それを教えてくれたのが8月4日放送のカンブリア宮殿の10周年&500回記念スペシャル企画、スパイバー代表執行役の関山和秀(せきやま かずひで)氏とTBM社長山﨑敦義(やまさき のぶよし)をフィーチャーした回だ。題して「10年で世の中は変えられる!素材に革命を起こす若きサムライたち」。なかなか恰好いい内容だった。
http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/backnumber/20160804.html

スパイバーは以前にも何かの番組で採り上げられていたが、夢の繊維“クモの糸”を人工的に量産したことで有名だ。NASAの研究者などが量産化を目指しながら成し遂げられない中、全く新たなやり方で「人工クモ糸」の量産化に道筋を付けたのが、スパイバーの関山氏だ。

アパレルはもちろん、自動車部品や医療機器などにこの夢の素材の新しいブレークスルーの期待が集まっている。そしてそれは世界的な関連部品メーカーが集約する日本で試行するのが合理的だ。スパイバーの本社は山形だが、日本市場で孵化した後は、この新素材を世界へ広げてくれるだろう。

もう1社のTBM社は初耳だった。山﨑氏が作り上げた「ライメックス」は、「石」を原料とした全く新しい「紙」だ。世界中どこでも大量に採ることができる石灰石とポリオレフィン樹脂を原料としているため、日本でも国内の資源だけで作ることが可能だという。
http://forbesjapan.com/articles/detail/13095

木と水を使わずに紙の代替品を製造することができるというのは冷静に考えてみると凄いことだ。環境負荷が大いに小さくなるうえに、石灰石という全世界に豊富にある原料を使える。コスト次第ではあるが、壁紙に利用できれば不燃材としても応用できる。ポテンシャルはかなり高い。

同社はその開発に、元日本製紙で「紙の神様」と呼ばれたベテラン技術者を巻き込み、ベンチャーの若者も一緒になり、世界の環境を変えるべく挑戦をしている。夢のある企業だ。