短期的視野しかない中国人経営者が日本のホテルを経営すると

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このブログでも中国人の儲け主義に閉口する事例を時折挙げているが、彼らはいずれ自分の首を絞めることに気づかない。そんなことを教えてくれる例があった。5/28(土)に放送されたNHKのドキュメンタリー番組”NEXT 未来のために”は「中国人社長がやってきた 伊豆修善寺 “温泉ホテル”の9か月」。とても衝撃的な内容だった。

去年9月、伊豆・修善寺のホテル「滝亭」が外資に買収された。伊豆・修善寺のホテルを買収したのは中国の新興旅行会社。中国で過熱する日本旅行ブームに乗じて、このホテルを日本でのビジネス拡大の足がかりにしようと考えているのだ(これ自体は極めて健全なビジネス動機だ)。

社長の考えに基づき、副社長が運営責任者として日本に派遣され、従業員およそ50人の雇用や賃金は維持することを前提に、同ホテルでは業績改善に向けた経営方針の転換が図られた。それは“おもてなし”よりも効率を重視するものだった。

その戦略は極めて明快なものだった。中国人客をどんどん送ることで儲けのベースを拡大。中国人好みの土産物置く、従来のように料理を一品一品出すのを止めて一気に多くの皿を出す(多く見える方が中国人好み)、さらに宿泊客以外の客へのランチ営業もやる、というものだった。

中国人向けの接客やノルマの達成が求められるようになった従業員たち。これまで大切にしてきた日本型の接客“おもてなし”と、新たな経営方針の両立に悩み続けている。当然ながら仕事の量は大幅に増え、早朝から夜まで10時間以上働きづめの人が続出する羽目になる。一方で、一人ひとりのお客への目配りどころか材料の手配すら間に合わず(もしかすると値切り過ぎてこのホテルへの配達が後回しにされた?)、食事中の客を大幅に待たせることもしばしば。

このやり方に反発した接客責任者が退職願を出した後のドタバタ振りには呆れかえった。仲裁に入った日本人の部長に対し、「もしここに残りたいなら一ヶ月の間は料飲ではなくて施設清掃の方でパートとして働いてもらう。その期間の仕事ぶりや態度を見て、その上で正社員に戻すかどうか考える」と居丈高そのもの。まったく問題のありかを把握しようとしない。

当然、(会社の反省を期待していた)接客責任者は退職。その後も退職が相次ぎその数は5人にのぼった。しかし過去最高益を達成する勢いに、本社の中国人社長がご機嫌で視察に訪れる。その際に「人手が足らない」と訴える従業員に対し、中国人社長は「売り上げが上がっても従業員を増やせば利益は上がらない」と言い放っていた。後日、日本人を雇うかわりに本社から若い(全く経験のない)中国人社員が送り込まれてくるのだった(人手を補うどころか足手まといになることは明白)。

何とも日本人からするととんでもないホテルが一丁出来上がり、という感じだ。これでも確かに短期的には儲けられるだろうが、日本人客はまず近寄らないだろうから、いずれ中国人客でさえ馬鹿にするのではないか。彼らは「日本人客が満足する、日本人によるハイレベルのサービス」を享受したいのだから。