無気力試合とシステムの不備、そして「冤罪」の可能性

ビジネスモデル

ロンドン五輪での女子バドミントンで、わざと負けを狙ったとして4組8人が失格になるという前代未聞の出来事があった。中国・インドネシアは処分を受け入れるも、韓国のみが異議申立てしたが却下されたそうだ。

これは明らかにシステムの不備である。3ケ国(中国、韓国、インドネシア)の8人が関わるということから分かるように、特定の国だけが汚いという話ではない。要は主催者側の仕組み設計の際に考えが足らなかったのであろう。

少なくとも分かっているのは、4組とも最終戦を前に既に決勝トーナメント(決勝T)進出を決めており、最終戦の勝敗で準々決勝の相手が決まることになっていたということ。ここまで聞くと、他の競技でもよくある方式に聞こえる。何が狂ったのか。

残念ながら夕刊の記事にある図と記事の書き方が悪く、読んでも結局、本当のところが分からないままである。朝日にまともなスポーツ記者はいないのか?ウェブでもまともな解説図を載せてくれるところがない。

ここからは想像だが、多分まずD組で中国チームの1つが2位になり、決勝Tでの位置が決まったのだろう。次にA組で中国と韓国が対戦したようだ。その際、A組の中国チームはD組の中国チームと決勝まで対戦しないよう、A組の2位を狙い最終戦をわざと負けようとしたのである。ここまでは分かる。次にA組の韓国チームはなぜか、C組1位になりそうな韓国チームと準々決勝で同国対戦しようとして、対中国戦でやはりわざと負けようとしたとされる、ということになる(まずここで疑問ありだが)。

直後に、C組の韓国とインドネシアの対戦があったとされる。既にA組1位の韓国チームと2位の中国のチームの決勝Tでの位置は決まっている。C組の1位になると世界ランク1位でA組2位の中国チームと対戦することになるので、韓国とインドネシア両チームとも勝ちたくない。だからわざと負けようとしたということである。しかも韓国チームはC組の2位になるとA組1位の韓国チームとの同国対決になる。これで確実に準決勝に韓国チームのどちらかが進めると考えたとされる。

正直、A組2位となった中国チームと、C組の2位となったインドネシアチームのやったことは汚いのかも知れない(だからこそ非難されるし、失格とされる)が、このシステムでは、決勝Tで勝ち上がるのにいい位置を最終戦で選ぼうとするのは当然ではないだろうか。バドミントンには引き分け狙いという選択肢がないだろうから負けを狙ったのだろうが、そうした意図的選択をさせる仕組みがおかしい。あらかじめ組み合わせを決めておくのではなく、決勝Tに8チームが勝ち残った時点でくじ引きで対戦を決めればよいではないか。一方のブロックに1位通過のチームが偏る不公平を危惧するのであれば、1位通過と2位通過が必ず対戦するように別々のくじ引きにしてしまえばよい。こうした検討をあらかじめしていなかったのは、主催者側の怠慢である。

もう一つ疑問なのは、本当に韓国チームは両方とも、準々決勝での自国チーム同士対決を望んだのか?という点である。もし準決勝で対戦するのであれば、確実にどちらか決勝に行けるので、コーチがそう指導することもあり得ない話ではない。しかし準々決勝で自国チーム同士が潰し合いをするのではメダル獲得のチャンスが小さくなってしまうと考えるのが普通ではないか。これは「冤罪」の可能性があると小生には思える。

さて、この騒ぎに乗じようとしたのはインドのオリンピック連盟。「B組の日本も1位になるとD組2位の中国と対戦することになるため、格下の台湾にわざと負けた。そのせいで台湾がB組1位、インドが3位となり、決勝Tから脱落した」と主張したそうだ。D組1位のオランダも強いので、そんな訳あるか!とは思うが、中国が苦手であれば論理的にはあり得る。「通るとは思わない主張でも、ダメもとで言ってみる」というインド人らしい厚かましさではある。