渋滞緩和と交通インフラ整備に貢献するニッポンの技術

グローバル

9月1日(月)の未来世紀ジパング(TV東京系)は「アジアを悩ます大渋滞 日本の技術で解消せよ」でした。ホーチミン市では都市鉄道の導入計画を手伝い、最近も調査・研究していたテーマでしたので、興味深く録画を観ました。

国が豊かになる過程で必ずといっていいほど起こる事象、”交通渋滞”。自動車や2輪車が急増する一方で、交通インフラが整わないのが主な原因です。世界的にみてもひどい渋滞が日常的に起きているのがアジアの主要都市であり、大きな経済損失を生んでいます。

今回の番組は、想像を絶する渋滞から生まれた珍商売、そして渋滞を解消するため取り入れられている日本の様々な技術を紹介してくれました。取材場所はインドネシアのジャカルタとバングラデシュのダッカです。

車にバイク、信号のない交差点、インドネシアの首都ジャカルタは渋滞につぐ渋滞で、「世界第二位の渋滞都市」と言われるほどです(不名誉なNo.1はタイのバンコクです)。勝手に交通整理をして小銭を儲ける人(でも役に立っているように見えます)や、渋滞で前に進まない車に物を売りつける人達までたくさんいます。もうカオスですね。

地元警察は渋滞を少しでもなくそうと躍起です。違法駐車の車両を懲らしめるため、タイヤの空気を強制的に抜いているのには驚きです。彼らが最近導入したのが、日本のホンダによるスマホ・アプリです。白バイに乗った警察官にこれを持たすだけで、よく渋滞する場所のデータが自動的に蓄積されるという優れモノです(センター側は日本で使われているホンダ・オーナー向けシステムを応用したと思われます)。このシステムが示す渋滞箇所に優先的に警察官を派遣すれば、不足する交通整理員でも何とか対応できるというわけです。

同じジャカルタでは、もう1つの日本の貢献がフィーチャーされていました。行政は、自動車の数を少しでも減らそうと、電車の利用を呼びかけています。しかし、インドネシアの電車は汚く、物騒だとしてこれまで人気がありませんでした。屋根に乗客が乗っかっている光景もよくありましたが、落ちたりして怪我するだけでなく、時には死亡するケースさえ毎年二桁あったそうです。

でも綺麗で冷房の効いた、日本の中古電車を輸入して走らせるようになって、今では電車通勤が快適なものになり、自家用車からシフトする人が増えているのです。車内が涼しいので、もう屋根に乗っかる人はいません(以前は車内が蒸し風呂だったから屋根に乗っていたのですね)。日本で20年以上走っていた電車が活躍しているというのは驚きですが、首都圏を走る電車の約8割が今や日本の中古電車だそうです。

アジアの最貧国、バングラデシュの首都ダッカでも渋滞は凄まじく、社会の発展が阻害されています。遅刻するのが日常茶飯事と諦め顔の学生。1時間ほどで着く予定が5時間掛ったと呆れるトラック運転手。等々。

自動車・2輪車以外に、「リキシャ」と呼ばれる三輪自転車タクシーが目立ちます。実はこれが渋滞の主要な原因の一つ。交通ルールを無視してどこでも客を拾う、そして客待ちでたむろっているからです。行政は渋滞解消のために人々にバス利用を促しているのですが、偽のチケットの販売や無賃乗車が横行していたため、バス会社の収入は伸びず、バスも増やせないため、乗客の積み残しがあるほど満員で、乗り心地やサービスは最悪でした。

そこで登場したのが、日本の“Suica”と同じ技術(Felicaシステム)を使ったICカードです。政府系のバス会社が採用したそうです。デポジットとチャージ代を払って入手したICカードを、乗車の際に車掌の持つ読み取り機にかざすだけです。現金もありですが、ICカードの乗客が優先のようで、多くの乗客がICカードを使用しているようです。

この方式を導入したお陰で、この会社のバスは乗車がスムーズになって一番スピーディなバスとしての評判を確立しました。それだけでなく、無賃乗車を一掃できたことで収入が大幅アップしたそうです。お陰でシステム投資もペイし、新車も多く導入され、女性専用シートも用意でき(イスラム女性には特に朗報です)、願ったり叶ったりの様子でした。日本の技術が役に立って喜ばれるというのは実に誇らしいですね。

PS 渋滞都市トップ10に欧米からランクインしたのは、米国のレキシントンと、情けないことに小生が昔住んでいた、同じ米国のテキサス州都オースティンでした。急成長に交通インフラが追いついていないと大渋滞が日常的に発生するのは洋の東西を問わないという証拠です。