根強いファンに支えられたモスバーガー

ビジネスモデル

8月15日(木)のカンブリア宮殿は、業界2位のモスフードサービス代表取締役社長櫻田厚(さくらだ・あつし)氏を招き、題して「不動の人気を博す!日本生まれのハンバーガーチェーンの秘密」。創業者の甥っ子で最初の店の店長だ。いわばモスバーガーと共に歩んだ人だ。

モスバーガーの特徴の一つは、客の注文があってから調理を始めること。冷めたらおいしさも半減するとの考えからで、1972年の創業当時から変わらない。そのため出てくるのが少々遅いのだが、これもまたファンは承知の上。もう一つの特徴であるたっぷり野菜は、全国3000軒の契約農家が作ったもの。キャベツやトマト、レタスは丸ごと店に運ばれて、(他のチェーンがセントラルキッチン方式でカットした野菜を店舗に配るのに対し)店内で一つひとつ仕込まれる。レタスは手でちぎっている。契約農家も「実際に畑にまで見に来て作物の出来を確かめるのはモスさんだけ」と感心していた。これらのこだわりが客を魅了、創業7年で100店舗を達成し、全国47都道府県全てに進出した最初の外食企業ともなった。

MOSの由来はMountain(山のように気高く堂々と)、Ocean(海のように深く広い心で)、Sun(太陽のように燃え尽きることのない情熱をもって)という意味。人間と自然への限りない愛情、そんな人間集団でありたいという願いを込めたという。その精神が浸透しているのが店周辺の掃除。全店、毎朝必ず両隣3軒分の通りの掃除をやっているという。

モスバーガーの商品開発のモットーは“日本人の舌に合うハンバーガー”。定番商品の「モスバーガー」に入っているミートソースは、創業前に修行し参考にしたアメリカの店のチリソースが「日本人には辛すぎる」とアレンジしたもの。今やどのチェーン店でも販売されている「テリヤキバーガー」はモスバーガーが発明したもの。さらに、1987年に発売されたのは「ライスバーガー」を開発。これは、コメ余りに頭を悩ませていた農水省から相談され、2年間研究して出来たものだという。他にもモス発のヒット商品は多い。

番組の中で2つのエピソードが紹介されていた。一つは「値下げセールをやったことはないのですか?」に対する答で、「実は一度だけあります。創業30周年感謝セールで二週間、通常300円のモスバーガーを200円で販売しました。でも常連の客様方から一杯お叱りのメールや投書をいただいたので、2度とやりません」と。「なぜこんな真似をするんだ」「こんなことを続けるなら、もう行かない」「モスにはおいしさを求めているのであって、安いからではない」というきつい『お叱り』だったという。モスの常連の気持ちが滲み出ている。

もう一つは、櫻田社長が店長をしていた店の真正面にマクドナルドの新店ができたときのこと。当人も「これは大変だ」と思ったそうだが、常連客が週に何度も来て「大変だろうが頑張れ」「浮気しないからね」と励ましてくれ、櫻田は店奥のキッチンで号泣してしまったそうだ。

近所に愛される店だったからこその応援であり、その後の成長だ。今や全国に1431店舗あり、連結の売上が600億を超える大企業である。村上龍氏と同様、小生もなんとなく小じんまりとした企業のイメージを持っていたが、とんでもない勘違いだったわけである。