日越ソフト開発協力の真の課題は何か

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本日、5月7日(火)、JISA-VINASA 日越ソフトウェアビジネス協力セミナーという催しに参加した。(社)情報サービス産業協会の主催する、ベトナムのシステム開発会社を招いての紹介セミナー&交流会である。ベトナムでのオフショア開発に興味のある日本のSI/システム開発会社に対し、「ウチと組みませんか」と秋波を送るのが目的だったようだ。

ベトナムにベースを置く各社が自社の特長や得意領域をプレゼンするのがメイン・イベントで、その後はパネル・ディスカッションとショートプレゼン、そして名刺交換&懇親会と続いた。プレゼンとショートプレゼンの中身の大半が、いかに自社が日本企業からのオフショア開発に実績があり、サービス品質が高い(CMMIレベル〇を取得!など)のに単価が安く、しかも日本語と日本文化を理解しているかをアピールするものだった(最初は興味深く聞いていたが、各社とも同じようなことを強調するため、途中からは飽きてしまった)。

パネル・ディスカッションにおいても、日本のシステム開発会社から見て、中国と比べてベトナムへのオフショア開発での課題としては「日本語を流ちょうに使える人が少ないこと」が真っ先に上がっていた。実際、ベトナムの学生の間では英語学習熱はすごいものがあるが、日本語学習者は2ケタほど少ないだろう。それに対しベトナム側から、「とても日本語ができる人は(希少価値があり)日本企業に引っ張られてしまう」ので、オフショア開発会社としては「そこそこ日本語ができる程度にまで教育する」「極端に頭脳優秀な人材だと定着しない」という反応だったのは、本音でもあり面白かった。

聞いているうちに思ったのは、日本のSI/システム開発会社側が日本語にこだわるから選択肢が少なくなるのであって、日本のユーザー企業にとってのコスト削減が不十分になってしまうのではないか。ユーザー企業が日本語で要求定義を出すのは仕方ないが、それを基に日本のSI/システム開発会社が英語で仕様を書いて設計すれば、そのオフショア先は世界中に拡がる。中国かベトナムかというレベルではなくなる。

もう一つ思ったのは、本日プレゼンしたベトナムの各社ではサービス品質を向上させるため努力を惜しまずに精進していることである。数社は発注企業に開発の進捗状況をモニタリングさせるサービスまで実施している。日本のシステム開発会社でそこまでやっているところが何割あるだろう。

結局、窓口となる日本のSI/システム開発会社の英語能力のなさや管理能力の凡庸さが日本のシステム開発のコスト高につながっており、日本でのIT活用の遅れの原因の一つになっているのかも知れないと思うと、暗澹たるものを感じた。