日本式サービスの本質を究めて現地流にアレンジすることが重要

グローバル

NHKスペシャルの「ジャパンブランド」の「第1回 日本式サービス 強さの秘密」と「第2回 日本式サービスで世界をめざす」を続けて観ました。日本ならではの強みとして日本式のサービスを世界に輸出しようという内容の2夜シリーズ番組です。

1回目のテーマは「そもそも、強い日本式サービスとは何か」。「おもてなし」という言葉が流行語となり、日本人のきめ細やかさがいい、などと言われますが、その実態と本質は何だろうと考察したものです。

西洋式のホテルサービスに、日本の旅館ならではのサービスで対抗しようとする企業の、「旅館のサービスのどこが日本らしくて良いのか」を突き詰めようとする現場(星野リゾートがフィーチャーされていました)や、アメリカで生まれたコンビニエンスストアに「日本ならではの便利」を詰め込み、その強みをアメリカやドバイに広めようとする企業(セブン&アイですね)の現場などを取材してくれました。

結局、強い日本式サービスというのは決して単なる丁寧さやきめ細かさだけじゃなく、お客の気持ちになって本当に味わってほしい体験を伝える/感じさせることなのだと思います。欧米流がマクドナルドに代表される「どこに行っても変わらない安心の品質」だとすれば、日本流はフレッシュネスバーガーに代表される「ちょっと余分に手間とコストが掛ってもその店の従業員が真剣になって考えてくれる親身さ」ではないでしょうか。

第2回では、その日本式サービスを海外に持って行く場合の山積みの課題についての考察でした。日本での出店戦略は通用しないことが多いですし、現地の従業員の多くは個人主義的な労働観を持つため会社への帰属意識が低く、せっかく時間をかけて技術を教えてもより高い給与を求めてすぐに転職しまいます。また後発の中国・韓国企業による「低価格日本風サービス」というコピーに客を奪われるケースも後を絶ちません。パートナー探しでも煮え湯を飲まされるケースが多いことは小生がセミナー等で訴えてきた通りです。

番組では、日本が得意としてきた「人材育成」と「課題解決力」を武器に海外進出に成功した事例(QBハウスやイオン、Sushi Kingなど)を軸に、日本式サービスが新たな稼ぎ手となるための条件を探ってくれました。

結論からいうと、もともとの日本的経営の強みだった社員のコミュニケーションを強化し、現地の幹部を育て彼らに権限移譲することで、日本式サービスの本質を保ったまま、個々の適用場面や改善において現場の従業員の知恵を活かすという、極めてまともかつ日本人が得意なはずのアプローチです。現地流「日本式サービス」を進化させることこそがジャパンブランドを活かす道です。