日本でのLCCの勝負はこれから

ビジネスモデル

国内の格安航空会社(LCC)3社(ジェットスター、ピーチ・アビエーション、エアアジア・ジャパン)が就航して約1年。そのためLCCに関する番組が幾つか集中して放映された。

一つがBizサンデー+。搭乗率78%と業績好調なピーチを採り上げていた。大阪の“おばちゃん”の声を参考に、低価格だけに留まらない独自のサービスを追求し続けているからとの評価だ。

実はピーチがやっていることはどのLCCもやっている、極めてオーソドックスなことばかり。予約はネットで行うことを前提に、空港での発券業務はマシンを使う。機体は統一し、整備・教育の手間や部品在庫を節約する。座席は前との間隔を少し詰めて席数を多くする。荷物預けや機内サービスは有料にする。客席乗務員も複数の役割を行い、着陸した飛行機が次の目的地に飛び立つサイクルを短くし、稼働率を上げる。…等々。

他のLCCと違うところがあるとすると、①ベースが大阪なので、節約志向の本音で反応する客(大阪のおばちゃん達)が多い。②関西空港は24時間稼働で、離着陸時刻の制約が少なく、1日当たり同じ機体を飛ばせる回数が多くなる。③その関空にはLCC専用ターミナルがあり、(ゲート直結の搭乗接続施設などはないなど)施設コストも安いため施設使用料が割安に設定されている。といったところか。特にこの②③は、成田ベースの会社に比べ経営的には大きな優位点であることは間違いない。あと、同社のコーポレートカラーであるピンクがカワイイというイメージを女性客に与え、好感度を獲得しているのも事実(アジア市場への進出にも有利な模様)。

クローズアップ現代「格安は日本の空を変えるか」は業界横断的な視点で捉えていた。特に通常より3~7割ほど安い航空運賃が、飛行機を利用しなかった人たちの需要を掘り起こし、新たな人の流れが生まれつつあることに焦点を当てていた。

関西国際空港に去年できたLCC専用ターミナルは、日帰りで沖縄旅行に向かう若者や、LCCを乗り継いで北海道から福岡へ旅する老夫婦など、これまでにないやり方で空の旅を楽しむ人たちでにぎわう。安いときには往復1万円以内に収まるとなれば、新幹線や高速バスより圧倒的に魅力的だ。ビジネス客の「会社で経費もかかるので、なるべく安いのを使えって言われている」というコメントは実感できる。

一方、LCCが日本で定着するための課題も見えてきた。アジア最大のLCCであるエアアジアと全日空が作ったエアアジア・ジャパンは合弁を解消。安さを最大限に追求する手法が、細やかなサービスを求める日本人に合わず、思うような成果が出せなかったという。

低価格だけでは需要が伸びず、こまやかなサービスで客の心をつかむ必要があるという話だが、まだユーザーが半信半疑のために様子見になっているという側面はあるだろう。それに、ギリギリのスケジュールで飛んで飛行機を使いまわしているために、一旦遅延が発生するとその後にどんどん連鎖するのも事実。ビジネス客の中にはその可能性を考えて敬遠する人たちが少なくないのも事実だ。

ある格安航空会社CEOの「まだまだ改善の余地がある。新しい世界を切り開いていきたい」というコメントの通り、まだまだ正しいニーズの掘りあて方をしていないというのが実際のところだろう。

また茨城空港のようにLCCを歓迎する地方空港は今後も増えるのではないか(ただし茨城空港が狙うべきは首都圏客ではなく、北関東および東北の客のはずだが)。成田ではなく羽田なら間違いなく膨大な需要が掘り起こせるが、枠が全くないので、残念ながらそれは無理(首都圏在住者としては残念至極)。中部国際空港がLCCにとって次のターゲットになるのではないか。