岐路に立つ日本のコメ作り

ビジネスモデル

このところたまたまだが、コメに関するテレビ番組や記事を目にすることが重なった。地方創生に関して気になる点なので、余計に目がいくのかも知れない。

一つはテレビ東京の「ガイアの夜明け」、タイトルは「攻める!日本のコメ」と勇ましいものだった。 http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber3/preview_20161108.html

内容としては、国内でのコメ産地間での戦いが中心的なテーマで、ある意味、前向きなトーンだった。主役は2者。精米機メーカー兼米穀事業も展開する、コメの総合企業の「東洋ライス」。新たに開発したのが、「ロウカット玄米」というコメ(健康に良いとされるが食べにくい玄米を、白米のように美味しく食べられるようにした商品)を、新たに手を組んだ産地(島根県の安来地区)と共にプロモーションしていく話だった。

玄米の表面にある栄養を多く含む糠層は残しつつ、ロウ層のみを取り除くことで、「白米のような食べやすさ・美味しさ」と、「玄米のヘルシーさ」を両立した、この商品は現代的なニーズにマッチしており、人気商品になる可能性を秘めている。

安来というのは「東の魚沼、西の仁多米」と謳われる高級ブランド「仁多米」の産地のすぐ隣だ。ちょうど山の反対側に位置するため仁多米と同じ水や気候条件を兼ね備えた生産地だが、安来のコメは美味しいにもかかわらずブランド力はゼロ、無名の商品だった。この取り組みにより一挙に有名になるかも知れない。

とはいえこの商品制作過程で分かったのは、一般の農家では本当においしいコメを作るためにすべきはずの水温管理さえ従来はしていないということ。酪農家と比べて相当たるんでいるのだなと感じた。

もう一つの番組はNHKのTVシンポジウム「日本のコメをどうする~みずほの国の新たな選択~」。10月18日にイイノホールで開催された「食料フォーラム2016『日本のコメをどうする』」を放映したものらしい。

盛田清秀(東北大学大学院教授)、柴田明夫(資源・食糧問題研究所代表)、藻谷浩介(日本総合研究所主席研究員)、金井健(JA全中常務理事)、八木輝治(鍋八農産代表取締役)、小林政幸(雪ほたか代表取締役)といった論客が日本のコメ作りと農村の未来について話し合ったのだが、なかなか面白かった。

さすがに「無理なら止めてしまえ」「全部政府が買い上げろ」などといった暴論はなかった。どうやって稲作、そして日本の景観の基本である水田を守っていくのか、簡単ではないことを理解しながら意見交換がされた。

ここ50年で消費は半減、価格も大幅に下落。農家の高齢化が進み、その平均年齢は66.3歳に達し、将来の担い手不足も心配されている。

こうした危機的な状況にはあれど、一方で情報通信技術を導入して経営改革に成功した大規模農家や、ブランド米を核にした地域づくりに取り組んでいる中山間地の自治体もあることが分かり、心強い感じもした(これらは「ガイアの夜明け」の内容とも通じるものだった)。

どなたかが言われたことだが、すべての農家が同じ方向に行くのは無理だし、同質的な競争に陥って総討ち死にしかねない。手間をかけて「特A」ブランド化し、そこそこの収穫量でも十分食っていける高価格を狙うもよし。大規模化しコストを下げて、リーズナブルな価格で薄利多売を狙うもよし。多様なやり方があってよい。それで日本の田園風景と食料自給がリーズナブルに維持できるなら。