対日非難を続ける韓国の思惑と苦境

グローバル

挑発行動が激しさを増す北朝鮮をけん制するための日本からの呼び掛けにも関わらず、5月に予定されていた韓日中首脳会談は延期された。加えて、尖閣諸島問題で日本避難を続ける中国と歩調を合わせるように、日本の閣僚の靖国神社参拝に対し、韓国が再び声高に非難の声を上げている。「日本は近隣諸国の感情を逆なでしている」と。

もちろん他国の法事を非難する資格などどんな国にもない故、中韓のこの主張はまともに取り合う必要すらないが、そもそも韓国におけるこの類(もう一つ「慰安婦問題」があり、そちらのほうが日本にとって実は致命的である)の対日非難には2つの狙いがある。

一つは、日本の信用を落とすことで、欧米亜の消費者に対し日本製の代わりに韓国製品を売り込む、純粋な外交方策としてのネガティブ・キャンペーンである。これは国家戦略としての冷静な行動であり、感情論ではない。日本と仲良くするよりも日本叩きに走ったほうが韓国にとって得なのだ。

もう一つは国内向けの政治的キャンペーンである。中国と同様、対日非難をすることで韓国国内世論を誘導し、政府への共感を増やすという積極的側面と、それ以上に、へたに日本に対し妥協をする姿勢を見せると政敵から「彼らは親日的だ」と非難されかねないという受動的側面の両方から、強硬な対日非難を続けるほうが政治的リスクが少ないからである。

どちらもキャンペーンの音頭を執るのは大統領周辺の首脳であり、打算的な行動なので、(ネト右の人たちがやるように)感情的になって反論したり怒ったりしても仕方ない。むしろそうした行動に出ることで却って韓国が損をするように、国際的に発信し立ち振る舞うことが日本政府には求められている。

それにしても、どうして韓国内で、北朝鮮の挑発という、本来なら日韓連携に動きやすいはずのタイミングで強硬な反日感情が露出するのかを理解すべきだ。これは韓国経済が今とんでもない苦境に追いやられており、その主因が日本だと考えられているからである。

アジア金融危機後のIMFによるショック療法、そしてリーマンショック後の経済回復策として、同国は極端な輸出主導経済を目指し、そのために財閥への資本集中と大胆な規制緩和を進めてきた。その結果、大幅かつ長期間にわたる円高・ウォン安に助けられ、電機・自動車を中心に日本メーカーに追いつき追い越すような成長を続けたことは記憶に新しい。

その過程では社会的には中間層が没落し、極端な格差社会にもなっており、その割に社会保障制度が貧弱なため、社会不安は増大している。そんな中でアベノミクス効果による「円安・ウォン高」が急速に進行したため、輸出産業が軒並み不調に陥っているのだ。そのせいで韓国の株価は急落し(外人投資家が資金を引き揚げ、東証に移したため)、逆資産効果により国内消費も低迷している。ちょうど日本と逆の状況なのである。

これを受け、韓国の週刊誌やTV番組では連日、「アベノミクスという日本の陰謀」や「円安空爆」といった過激な報道が続いているらしい。株で損をした富裕層はもちろん怒り心頭だが、大衆も「大企業ばかりが潤っているのも癪だったが、その恩恵が庶民に及ぶ前に大企業が儲からなくなれば、景気はもっと悪化し、自分たちはますます貧乏になる」と戦々恐々なのだ。

もともとこの数年間の「円高・ウォン安」が非合理的な水準で長く続き過ぎたものであり、「下駄を履いた」韓国企業が実力以上に、世界の市場で日本企業から商売を奪ってきたのが実態である。しかしこの円安はきっとこのあとオーバーシュートし、「円安・ウォン高」は歴史的水準に到達するに違いない。韓国の苦境はこれからが本番である。