客を楽しませることで従業員が楽しめるスーパー

ビジネスモデル

12月19日放送のカンブリア宮殿は、福岡の食品スーパー、ハローデイ社長の加治 敬通(かじ・のりゆき)氏を採り上げた。題して「ユニーク店舗に客が殺到!デフレに勝つ“楽しいスーパー”」。

山口・下関市にあるハローデイでは店内に魚の装飾が施されていて、天井には巨大なクジラの模型が泳ぐ。志免町のハローデイではロボット、北九州市の店では学校の図書館をそれぞれイメージした装飾となっている。いずれも所狭しと、手作りのぬいぐるみや絵が飾られている。ハローデイの店舗は、店ごとにディスプレイや品ぞろえが違うのである。パート従業員らが店の装飾についてアイデアを出し、各店舗が費用を出して実行しているのだ。パートの一人「自分のアトリエみたいに楽しい」。

またハローデイ横代店で販売されている「ケーキずし」もパート従業員の発案によるもの。装飾もさる事ながら、お客さんが高級志向のものでも買ってくれるよう、商品の工夫された陳列も行っていて、お客が見て楽しむことを目指している。

11月下旬、ハローデイでは近隣の店同士が惣菜メニューや店内の装飾、陳列などを競い合う「ハロリンピック」が開催された。加治敬通社長が従業員の説明を聞きつつ店内を巡り、お客さんからの反応も上々だった。

ハローデイでは全国のカレールーや醤油など圧倒的な品揃えで、さらにお客さんが要望した商品は必ず仕入れている。他にも惣菜400種類のうち9割を手作りしているなど手間暇をかけていて、1匹のサワラは12種類の惣菜に加工して販売されている。

「ハローデイ」は40店舗を展開。業界が売り上げの減少に苦しむ中、20年近く増収増益を続けてきた。価格競争とは一線を画し、安売りには頼らない。効率よりも客を楽しませること。しかもそのために手間を掛け、工夫をする。それを自分たちがまず楽しんでしまう。その背景には「従業員が楽しく働くことで良い店をつくる」というハローデイ独自の考え方があった。

ハローデイは自分たちの店をスーパーとは呼ばず“アミューズメントフードホール”と自称する。それほど、楽しい見せ方に徹底してこだわっているということだ。ほとんどディズニーランドの飾り付けの気分である。店内のデコレーションだけでなく、野菜や果物を巨大ティーカップに入れるなど、商品の見せ方にも独自の工夫を凝らす。

しかし重要なのは見た目だけではない。たとえば、果物コーナーの横には高級ジュースを陳列。すると、売り上げが大きく伸びたという。肉や魚も店内で様々な形に加工し、付加価値を高める。独自の手法で商品の魅力をアピールし、客を買う気にさせる。どうやると客がその気になるのかを、パートを中心とする現場の人たちが自ら楽しんで工夫しているのである。ほとんど「サークルのノリ」である。

江藤佐智子さんらパート従業員が、お年寄りのために簡単に作れる総裁レシピを配布している。お客からも好評で、毎日来る常連さんに至っては(レシピをもらいつつ)江藤さんとの会話が楽しみだという。仕事後に江藤さんは自宅で新メニューのレシピを考案していて、家族が味見を担当している。

パート従業員がなぜ、そこまでやる気になるのか。そこには、加治氏の苦い経験が反映されている。父親が経営していたハローデイに加治が入社したころ、会社は赤字で巨額の借入金を抱えていた。加治氏は現場で改革を断行。経営は上向いたが、社員の心は離れ、次々と辞めていく。自分のやり方に悩んだ加治氏は先輩経営者の言葉に刺激され、考えを改める。そして「規模の大きな会社でなく、日本一働きたい会社」を目指すようになったという。店舗裏にはお客さんから寄せられた褒め言葉を張り出してあり、パート従業員のやる気を引き出している。

村上龍氏が指摘するように、ここでは現場の従業員が企画・アイデアを考え、協力しあって実行し、達成感や充実感を得て、お客を楽しませることにいそしんでいるのだ。