外資ファンドと日本企業の新しい関係の芽生え

ビジネスモデル

NHK BSの「ドキュメンタリーWAVE」で「“黒船”再来~急増する外資ファンド~」を観た。番組は、最近改めて注目されている、日本に投資する外資ファンドの動きに注目し、特に日本通の米国人が創設した、日本の公開株式市場専門のファンド、タイヨウ・ファンドの動きを追う。同時に、グローバル企業として生き残ろうと経営改善を図る、トプコンを代表とする日本企業の受け止め方と対応具合もクローズアップする。

この数カ月、日本への外資ファンドによる投資が急加速している。(本当は以前からあるが)新しい動きとして最近注目されているのが、友好的アプローチと投資先企業に対する支援を組み合わせた「ハンズオン型」のファンド。タイヨウはその先駆者の一つで、長期投資家である。

若い頃に日本に留学しそのまま日本でのコンサルタント会社で働いたヘイウッドCEOは日本通で、実に日本が好きである。彼は「“ハゲタカ”と呼ばれたような敵対的手法はもう通用しない。経営改善策を具体的に提示し、日本的な経営から効率的で儲かる経営へと友好的に導くことが高いリターンを生む」という。

トプコンはタイヨウが8年前に投資して以来の付き合い。内田社長は株主総会で「言われたことは達成したでしょ」と少し誇らしげ。「最初はむかっときたけどね」と冗談めかして言うが、本音だろう。その上で今後について「ここまでは(コスト削減やリストラだから)簡単だったが、これからは成長が課題なので難しい。これからもご協力を」と極めて前向きに捉えていることが分かる。

トプコンは、最初はタイヨウの助言を無視し、半導体関連事業と精密光学事業での赤字を続け(それでも、測量事業と医療事業で利益は伸びたが)、その後のリーマンショックおよび超円高で業績が急激に悪化し株価も急落したのち、ようやく構造改革に踏み込んだとのこと。その際にきっかけになったのが、タイヨウが提供した競合メーカーとのベンチマーク分析。当たっているし、第3者からの指摘ゆえに危機意識が芽生えたとのことである(本来は経営コンサルタントがやらなければいけない話だが…)。

内田社長らが今やタイヨウを実に信頼していることは幾つかの言動で分かる。例えば、研修の一環で株主視点を学ばせるために、米国にあるタイヨウに中堅幹部を4人数日間派遣して、タイヨウのスタッフと議論し課題とその解決策を考えさせる場面があった。また、リストラを終えたトプコンは農業分野でのIT活用に大きな事業機会を見出しているようだが、その事業の成長可能性や米国法人の組織作りにタイヨウはきちんと目を光らせようとしていた。また今後の成長に必要な手段としてM&A活用を薦めていたのも当然だ。そうしたタイヨウの視点に「自分たちにない、よいところをミックスしたい」とトプコン経営幹部は前向きだった。

西武HDとサーベラスが火花を散らしている最中なので、面白いタイミングであった。そうしたハゲタカっぽい多くの外資ファンドが日本市場を見放して撤退した中、ずっと投資を続けてきたタイヨウの覚悟は立派なものだ。それにしても番組の「黒船」という表現はかなりズレていると感じた。