外国人向け観光振興にビッグデータと新発想が活躍

グローバル

4月8日(水)放送のクローズアップ現代(今、やらせ問題で叩かれていますが、小生はこの番組、好きです)は「観光にビッグデータ!?~外国人呼びこむ新戦略~」でした。

円安の追い風を受け、去年日本を訪れた外国人旅行客は過去最高の1341万人を記録したそうです。政府は成長戦略の要として、2020年までに2000万人を呼び込む目標を掲げています。そうした中、観光庁が外国人観光客の行動や嗜好を分析する新たな取り組みを開始しましたが、本放送ではそれを紹介していました。

空港などで呼びかけて、スマートフォン用の乗り換え案内アプリをダウンロードしてもらい、5000人以上の外国人観光客の位置情報を本人の同意を得て収集したうえで、行動パターンの詳細な分析を開始したのです。

ちなみに、東京で最も人が集中していた地点は、有名な神社仏閣でも遊園地でもなく、渋谷・ハチ公前のスクランブル交差点です。あの沢山の人達が、ぶつからずに素早くすれ違う光景に感動するのですね。外国人にとっては、観光客向けに作られた施設では味わえない、日常の中で自然に生まれたもの、本物でユニークな経験をすることが大事なのだそうです(外国人向け旅行ガイドブック著者の談)。

さらに明らかになったのは、全国規模で見てみると、外国人観光客の訪問先に大きな偏りがあることが分かったのです。海外の旅行代理店にツアーを売り込むなどの従来型プロモーションの効果に限界があることが露呈したのですね。

集中していたのは東京と大阪を結ぶ、いわゆる「ゴールデンルート」。富士山や京都などを巡る日本観光の定番コースです。ここに6割を占める個人客の移動が集中しており、そのほかの地方への移動は、スキー場が多い北海道や、原爆ドームがある広島など、世界的に有名な観光地に限られていました。観光客増加の効果が他地域に殆ど波及していないというのが現実でした。

どうすれば個人客の心をつかむことができるのか、「ビッグデータ」から外国人観光客の好みをつかみ、新たなサービスを展開する模索が各地で始まっています。

山梨県の観光課では、県内の外国人観光客の移動データを分析しました。県内一の観光地である河口湖周辺に人が集中している一方、意外で辺鄙な場所に外国人が集まっているのを見つけ、実地調査に出かけました。そこにそびえ立っていたのは、戦後建てられた比較的新しい五重塔。しかしタイから来たという若い男女がカメラを向ける先に目をやると、富士山と五重塔が1枚の絵のように見える絶景が広がっていました。この光景がタイの旅行サイトで絶景ポイントとして取り上げられていた、というのが旅行者集中の謎の種明かしでした。

このように日本人が観光用としては見過ごしているような絶景ポイントというのは、まだまだ全国に多く存在しています。また、飛騨古川という町に今、里山サイクリングのために外国人観光客が殺到しているそうです。日常の中で自然に生まれた里山の風景や、地元の人たちとの交流ができるようなところが評価されているのです。

外国人向け観光を推進する人たちは固定観念を捨て、その地の原風景はどういったものなのか、何がその土地らしいのか、を真剣に考え直すときです。それは実は、外国人向けだけでなく、日本人観光客を呼び寄せるためにも有効なはずです。