地熱発電の飛躍的実現を阻むものは何か

ビジネスモデル

1月7日放送の「未来世紀ジパング」(TV東京)「日本の新エネルギー第1弾:”地熱発電”の可能性とは?」と、1/12放送の「報道特集」(TBS)「”眠れる獅子”日本の地熱発電の可能性」を録画で続けて観た。

どちらの番組も、火山国・日本には恵まれた資源と世界の最先端を行く技術がありながら、離陸しない地熱発電の現況を取り上げていた。温泉業者との折り合いの問題、大半が国立公園内という立地環境保全の問題、計画から稼働までにおよそ10年かかるとも言われる期間の長さなど、乗り越えなければならないハードルも合わせて紹介し、日本での地熱発電の可能性を探るという趣旨だった。

前者の番組では、日本の地熱研究第一人者である、九州大学名誉教授で地熱情報研究所代表、江原幸雄氏がナビゲータを務め、丁寧な解説と冷静な評価がされていたように感じた。いわく、地熱発電のメリットは3つ。①CO2排出量が少ない。②天候に左右されず24時間発電可能。③太陽光や原子力と比べコストが格段に安い。

既存の温泉層と地熱発電のための掘削対象の地層はまったくかい離しており、本来であれば温泉業者が主張するほど心配には及ばないことも触れられていた。現在は1000~3000mほど掘って地熱を利用しているが、5000mくらいまで掘れば、温泉地でなくともその熱を利用できる、つまり温泉がない東京の都心でさえ、深く掘れば地熱発電所を作ることも可能だという話には驚いた。

地熱発電で26%の電力と地元の暖房をまかなう地熱先進国・アイスランドの事例を取り上げており、いかに日本がその資源を放置し続けてきたかを問うものになっていた。結論的にはどちらの番組も「期待しましょう」といった中途半端なものだった。しかし本当の意味での社会としての「課題」をもっと鋭角的に掘り下げて欲しかった。

番組を観終わって、正直、もどかしい気がしてならない。自然災害時にコントロールできない原発という悪魔を飼い慣らそうと無駄な努力をする代わりに、各地の温泉業者という既得権益者のエゴを抑えるだけで、地域住民の安全とエネルギー供給という大きな公益になるのだから、真っ当な感覚を持つ市民・政治家だったら結論は明白ではなかろうか。