営業改革を考える (2) 改革は一貫した「思想」に基づいて

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(Insight Now!記事の転載)
【概要または前振り】営業改革において「つまみ食い」はよい結果をもたらさない。肝心なことは、関連する諸要素が同じ「改革の思想」で一貫していることである。

営業改革には幾つかの要素がある。典型的には営業プロセス、体制、研修、管理・指導、評価・褒賞制度などである。肝心なことは、これらの要素が同じ「思想」に根差して一貫していることである(前回「営業改革は科学的であるべき」と言った直後に「思想」では戸惑われるかも知れないが、ピンとくる言葉として使わせていただきたい)。

しかし実際の企業現場では、それぞれの要素がほとんど関連なく設計されていて、担当者間の意思疎通もなく、改革実施タイミングもバラバラ、結果として大した効果を生まずに中止、ということは少なくないようだ。

実際、先日お話を伺った建築関連企業でも、色々な試みをやっては中止していることが判明した。小生が挙げた幾つかの営業改革策の例に対し、「ああそれに似たようなこと、うちでもやりましたが、あまり効果が出ないままなので止めました」という反応が幾つか続いた。それぞれの実施タイミングを確認すると案の定、バラバラだった。つまり、思いついて何か特定の制度やプロセスを変えてみるのだが、部分最適なので効果が出ないまま、やがて元の木阿弥に戻ってしまうということを繰り返していたのだ。

大事なのは、どういう「戦略的狙い」(そもそもなぜ改革が必要なのか、どの顧客グループを重点的に攻略するのか、その際の提案価値の重点は何か、など)に基づいて営業のあり方をどう変えたいと思っているのか、という「改革の思想」をしっかりと組織内で共有して、それにマッチするように営業プロセスや管理のやり方など、関連する要素全般を同じ方向で見直す必要があるということなのである。

例えば国内自動車ディーラー業界では、以前は「一匹狼」的な営業マンが個々に地域住民を片っ端から戸別訪問することで自家用車販売の実績を上げてきた。しかし自家用車の保有率が高まった現在、焦点はむしろ買い替え需要である。しかも昼間の留守宅が多くなったため、ディーラーのショウルームに消費者が足を運ぶように仕向けるように営業プロセスは大きく変わった。そして、そこでの商談において消費者の意向をいかに汲み取るか、営業マンはその後のフォローでいかに話を詰めるかに、プロセスの重点は完全に移っている。そのためにショウルームのスタッフやサービス員と営業マンの連携が重要であり、彼らの評価ポイントもそこにある。彼らに対する教育研修もそうした観点で設計されているはずだ。

営業の仕組みを変えるというのは、こうした一貫性を保って全体を移行させてこそ効果が出るものである。営業プロセスだけ、研修内容だけ、報酬・褒賞制度だけ変えるなどといった「つまみ食い」的な修正では、決してよい結果はもたらされない。