函館No.1のハンバーガー店の経営は真を見極める

ビジネスモデル

6月19日に 放送された「カンブリア宮殿」は函館ナンバー・ワンのハンバーガー・ショップ、ラッキーピエロの社長、王一郎(おう いちろう)氏を招いての「大手に勝つ!地域No.1店のつくり方~熱狂ファンに愛される異色ハンバーガーチェーン」でした。初めて知ったチェーンですが、次に函館に行ったら是非食べたいと思いました。

全国ブランドの大手ハンバーガーチェーンを向こうに回し地域ナンバー1の人気を誇り、函館市を中心に16店舗を展開するラッキーピエロ。地域シェアは65%とダントツ。年間180万人が殺到する超人気店です。函館の人は何かあれば「ラッピ」に来店しますし、誕生会や退院祝いパーティでは「ラッピ」のハンバーガーを皆でほおばるのです。

大手を凌駕するローカルチェーンは“真逆経営“で、ともすると非効率に見えます。

まず、ハンバーガー店なのに、メニュー数は100種類を超えます。名物メニュー「チャイニーズチキンバーガー」(甘辛く味付けした鶏の空揚げが具材。村上龍氏と小池栄子さんにもウケていました)をはじめ、ハンバーガー類だけで15種類以上。ハンバーガー店なのにカレーやオムライス、かつ丼などもあります。

地元・北海道産の食材にこだわり、原価率は業界平均よりかなり高めの50%超。店舗も1店1店独自のテーマが設定されていて、内装が全て異なります。王社長は「函館から出る気はない」と語り、東京進出など規模拡大に走るつもりはないと断言していました。 規模の追求と標準化で低コストの効率的経営を進めてきた大手の真逆を行きます。「地域になくてはならない存在になれ」「客を愛すれば地域で長く愛される店になる」のが、ラッキーピエログループの創業社長・王氏のポリシーなのです。

接客方針も独特です。常連客を“えこひいき”するのです。来店回数が増えると4段階で利用金額の還元率が高まるポイント制。最高ランクの常連客は「スーパースター」と呼ばれ、来店すると大歓待を受ける(店長がハグしていました!)など特別なサービスもありますし、新メニューの試食会に招待され、意見を表明することができます。常連客を「身内」と位置付けているのです。

「えこひいき」された客は自然と店に愛着がわき、さらに来店頻度が上がり、友人を連れてくるなど、熱狂的なファンが増えていくのです。 王社長は「会社のエネルギーは本来、一番買ってくれる客に注ぐべき」と考えています。多くの客に一度来てもらうのではなく、1人の客に長く通い続けてもらうことを重視しているのですね。

函館の小さなハンバーガー・ショップだったラッキーピエロが人気店になったきっかけは、実は口コミだったそうです。オートバイ愛好家が宿泊する宿に置かれた、旅行中の体験を書き込むノートから評判が広がり、バイクに乗った客が大挙して訪れるようになり、やがて人気は地域全体に浸透していったのです。 口コミの大切さに気付いた王氏は、客を驚かせる仕掛けを次々と打ち出しました。幾つか驚きのメニューが放送されていましたが、特大大盛りのかつ丼、タワーのようなハンバーガー、等々。なるほどfacebookやtwitterで誰かに伝えたくなりますね。

でも、村上龍氏も指摘していましたし王社長も認めていましたが、こうした目立つためのメニューがあっても、それだけでは意味がなく、結局は美味しくて安全という食の基本がベースなんですね。だって店の誰もが「おいしい、おいしい」って嬉しそうなのですから。やっぱりここのチャイニーズチキンバーガーを食べたいなと思いました。