再上場する日航

ビジネスモデル

日航が東証に再上場を申請した。会社更生法の申請以来2年半という、日本では異例のスピードでの再建といえる(米国にもGMなどの例がある)。国民の税金投入が無駄に終わらずに済み、喜ばしい限りだ。

2年連続の最高営業利益更新や、業界トップクラスの利益率といった成果には、①5200億円の債務免除、②3500億円の公的資金援助によるリストラ、③稲盛流の部門別収益管理の徹底が功を奏したと報道ではいわれている。確かにこれだけ手厚い支援を受ければ、再建は当初思われていたより容易だったのかも知れない。

実は会社更生法の直前、日航の経営危機が話題になっている頃、小生は日航の経営改革に関わっていた再建コンサルタントの2人と会話したことがある。その際、2人ともが自慢げに語っていたのが、「日航の現場で資金管理をきちんとできるように指導しています」というセリフであった。小生は非常に違和感を感じたものである。

確かに資金管理をきちんとできることは重要には違いないが、いわば台所が火事になっているのに包丁のとぎ方を指導しているような話だったからである。要は、赤字を垂れ流している元凶を取り除く経営レベルの大手術が必要なのに、現場での資金管理かよ!それで再建のプロとは!と呆れた訳である。案の定、日航が会社更生法を申請して企業再生支援機構の連中と稲盛チームが乗り込むと同時に、彼らは御用済みとなってしまったとのことだ。そのとんちんかんな処方箋による時間のロスが、会社更生法に踏み切らざるを得ない事態につながったのではと思う。

結局、日航の再建に何が効いたのか。小生の意見では、思い切ったリストラである。何といっても規制産業であることは変わりないので、利益を上げられる路線に集中した(その間、競合航空会社は限定されていた)ことが大きい。それまで地元出身の政治家が強引に地元空港に日航を就航させるパターンが野放図に拡がっていた不採算路線を思い切って切り捨てたのである。運航路線を縮小させた分、従業員も3分の2に減らしたことで固定人件費が大幅に圧縮された。所有する航空機も削減およびリースへの切り替えなど進めたと聞いている。これで収益が上がらないほうがおかしい。

結局、それまでの再建失敗は、中途半端なコスト削減や不要な資産の売却(これはこれでバブルの名残として大きいものだったようだ)、そして資金の効率化といった、ちまちました「改善」でお茶を濁していたからに過ぎなかったのである。会社更生法という土壇場に追いこまれたことで、自らの身を切り、政治家や地方空港に遠慮することなく不採算な事業を止めてしまう決断ができたということなのだろう。