伝説の漫画編集者と「リアル脱出ゲーム」仕掛け人の対談にはヒントが一杯

ビジネスモデル

あまり観ることのなかったEテレ「SWITCHインタビュー達人達(たち)」ですが、7月5日放送分「鳥嶋和彦×加藤隆生~ヒットを生むコツ!」は何となくタイトルに惹かれて録画してあり、随分遅れて観ました。そもそもこのお2人が誰なのかも知りませんでした。でも観終わってみると、いろんなヒントが詰まっていたので、すごく得した気分です。

鳥嶋氏は集英社の少年ジャンプ現編集長で、「ドラゴンボール」「ドラゴンクエスト」など数々の大ヒット誕生に関わった伝説の漫画編集者です。そういえばDr.スランプに登場する悪の科学者Dr.マシリトは何となく覚えていますが、この人がモデルだったのですね。

一方、加藤氏は大ブーム「リアル脱出ゲーム」の仕掛け人です。TV番組になったものは小生も観ていましたが、「リアル脱出ゲーム」はむしろ実際の会場で宝探しゲームみたいに楽しむ体験型イベントなのだそうです。なんと加藤氏は28歳までフリーターだったそうで、「何とか物語の中に入っていく方法はないだろうか」とずっと考えて育ち、フリーペーパーの企画の中で同僚の「昨夜、(PCゲームの)脱出ゲームでずっと夜中までやっていた」という言葉で「やりたかったのはこれだ」と気付いたそうです。

Dr.スランプやドラゴンボールの話、ジャンプの復活とそのための新人作家発掘の苦しみの話は一部どこかで聴いた気もするのですが、それでも楽しめました。この鳥嶋氏は厳しい編集者だったことで有名だそうですが、エピソードの語りなどを聞いて、「この人は引き出しが多い」と思いました。

社員への指導に悩む加藤氏に対し、同じくらいの編集員を率いる鳥嶋氏は「任せたら途中でチェックしちゃダメですよ」「終わってからコメントするのはいいけど」「なぜなら途中でチェックされるのが分かっていると、優秀な奴は手を抜くから」とアドバイスしました。真実ですね。自分が大手企業でコンサルタント組織を率いていたときには、まさにこうした覚悟で任せていましたので、よく分かります。でも今独立系の経営コンサルタントとしては、実行がきちんとされないことに悩むクライアント幹部に対して、これはなかなか言えないですね。

また、このリアル脱出ゲームがなぜ人気なのかという理由について加藤氏は「大人もクラブ活動をやりたいから」と分析していました。確かに30代以上の大人にとって興奮するほど夢中になれるものがなかなかありません。加藤氏が「自分も30才前後、無性に退屈していた」とつぶやいていたのが印象的でした。それに対しやはり鳥嶋氏は「ビジネスでも同じ。会社の金でゲームをすれば仕事も楽しくなる」と。そうなんですよね。ただ、このせりふは鳥嶋氏がサラリーマンであるから実感があるものであって、会社の代表である加藤氏(や小性など)はそこまで気楽な見方ができないことも事実ですね。