”伝統の味”を進化させる“新しい仕組み”

ビジネスモデル

1月7日のガイアの夜明け「”伝統の味”を打ち破る」の後半で紹介されていたnifty提供のサービス「うまいもんプロデューサー」が興味深かった。

食品を開発したい事業者が30万円を支払い、サイトに登録。するとアイデアや意見を出したい一般のユーザーがプロデューサーとなって、一緒に商品開発をしてくれるというものだ。 https://umaimon-p.nifty.com/ 

クラウドファンディングの出資者が金を出すのと同様、この場合は試食などの時間当然、と自分なりの意見を提供してくれるわけだ。当然、自分の意見を取り入れた商品が発売されたら、一生懸命に知人への宣伝も手伝ってくれるだろう(クラウドファンディングの場合も同様の傾向がある)。このサイトとバックにいる電通も宣伝に多少は協力してくれるが、ガイアの夜明けのようなテレビ番組で採り上げられるのが何といっても一番強力な宣伝ツールであることは間違いない。

さて、売上げの減少に頭を悩ませていた秋田県の老舗佃煮屋「佐藤食品」の4代目、佐藤賢一さん(31)もこのサービスに賭けてみた。うまいもんプロデューサーに寄せられた意見を基に新商品開発に乗り出したのだ。それがトマトを使った佃煮だった。

まず、トマトのエキスを使用してトマト風味の爽やかな佃煮を目指した。その製法は従来の製法とは全く違うもの。佃煮のメリットである保存性を多少犠牲にして美味しさを最優先し、”浅炊き”という製法を採用した。

しかし佐藤さんの佃煮を応援する約400人のうまいもんプロデューサーの内、9人が参加した試食会では「トマトの味がしない、魚の臭みが気になる」等々厳しい意見が続出。

秋田に戻った佐藤さんは、試食会で指摘された魚の臭みを抑える対策として酢を使うことにした。さらにトマト風味をより強く打ち出すために、トマトピューレを使うことにしたのだ。うまいもんプロデューサーの一部に試作品を送って食べてもらったところ、結構公表である。

意を強くした佐藤さん。「黄金佃煮 生炊若さぎ 完熟トマト」と銘名した商品を携えてやってきたのは、三越の恵比寿店。テスト販売に望むためだ。売れ行き次第で今後の取引が決まる。佐藤さん自らが売り場に立って試食を勧めると、試食した人たちが次々に購入。用意した50個が完売した。新商品は見事、三越恵比寿店で扱ってもらえることになった。

伝統の味も挑戦することで進化する。それを実証するような話だったが、それをサポートする仕組みができたことも大きいと感じた。