中国バブルはすでに崩壊したが、日本の二の舞を避ける努力は続いている

グローバル

今月のニューズレターでお薦めした番組が「未来世紀ジパング」の4月4日放送の回、「拡大スペシャル 追跡取材!中国バブル崩壊の真相」だった。御覧になった読者も多かったのではないかと思う。減速感が鮮明になる中、番組取材班は”中国バブル”の驚きの現場を再び取材。バブルは崩壊したのか、日本への影響はどこまであるのか、貴重な情報と共に検証してくれた。

番組宣伝にもあるように、20世紀のアメリカ100年分に匹敵する建材をわずか3年間で使い切った中国の巨大開発と建設ラッシュは凄まじかったことが分かる。解き放たれた13億の欲望はさらに、株と不動産そして高利回りの理財商品に殺到し、絵画や宝石からペットに至るまで中国は空前のバブル状態となっていた。いったんはじけたバブル経済が単純に萎まないのが、中国政府のコントロールのうまさであり、中国経済の奥深いところだ。

最初に紹介されたのは中国特有の商品のバブル事情だ。一つ目は「地球上で最も高価な犬」と言われたチベット原産の犬「チベタン・マスティフ」だ。一時は絶滅の危機に瀕し希少性が高いとされ、人気に火が付いた4年前には一匹3億7000万円にまで高騰。しかし今や二束三文に。

同じく4年前、中国各地で人々が熱狂していたのは翡翠。世界でも極端に中国人だけが偏愛するため、80万円がわずか2年で1300万円に値上がりした“翡翠バブル”もまた暴落。香港で開かれた世界最大の宝石見本市ではむしろ日本の真珠に人気が集中する始末。

番組が3年ほど前に取材した中国の巨大開発計画の鬼城=ゴーストタウンを追跡取してくれたが、不思議な実態が改めて印象づけられた。
① 世界一の高層ビル計画
ドバイを超える高さ838メートル、220階建て3万人収容のビル建設予定地には何もなく、広大な池に鴨の養殖場という驚きの光景。計画をぶち上げた「世界最速建設」を標榜する建築会社はいまだに計画放棄を公にしていない…。さすが見栄とハッタリの国・中国だ。
② 未来型の巨大工業団地
中国が威信をかけて9兆円を費やす計画。3年前にはすでに多くの工事がストップし、ゴーストタウンになっていた現場を再び訪ねると、新たな大規模建設の最中。工業都市を諦め方針転換した町の姿とは大学を中心とする研究都市。さすがそう簡単にはあきらめないタフネスぶりで、むしろ感心した。
③ ゴーストショッピングモール
計画では世界一の規模を誇った巨大ショッピングモールだったが、3年前の取材時にはか99%の店舗がすでに撤退していた「閑古鳥」状態。その後、莫大な資金が追加投入されリニューアルに成功したと報じられていた。しかし現場に客の姿はなく、開店休業状態。プロジェクト失敗を告げると不動産会社が借金を返せずに倒産するため、無理やり続けているのだそうだ。いつまで続くはずはない、不思議な状況だ。

急な景気減速で広がりつつある節約志向にマッチしたのが、「外食」から「内食」への転換だ。これを追い風に「中国の人民食」を目指し、日本のカレールーの普及にメーカーのハウス食品が攻勢に出ている。各地の社員食堂や5000人のチベット僧に提供した試食会も大成功。スーパーの売り場もジャックし、売り上げは急拡大中。しかし番組が見せた中国の家庭で食されるカレーは日本のカレーとは似ても似つかわない料理に変貌していたため、ハウスは「正しいカレーの料理法」を指導しようとしていた。そんなことしなくてもいいのにと小生には思えた。

日本人には不思議な「ヤマシタ」ブーム。中国の若者に絶大な人気を誇る山下智博さんは、日本では全く無名だがサイン会は3時間待ち。街を歩けば写真をせがまれ、感動して泣き出す人まで。テレビでは連日、日中戦争を舞台にした「抗日ドラマ」が放送されて親の世代、50代以上が独占する。そのため若者たちはネット上で生の日本に関する情報を求めていたためという。そんな“ヤマシタブーム”に注目した日本企業と、彼は商品の共同開発を進めていた。中国にしばらくいると商売がうまくなるのかも知れない。

最後に中国政府による“ゾンビ企業”対策が語られる。ゾンビ企業とは、経営が破綻しているのに政府や銀行の支援を受けて存続している企業。政府が作成したリストから漏れた企業では銀行からの融資がストップし倒産する。さらに経済を牽引してきた製造業では大量リストラが進んでいた。結局、中国政府はソフトランディングしようとしてきたが、さすがにそれは無理なことが分かってきたので、ハードランディングからクラッシュという事態を避けることができるのだったら、多少荒っぽくとも、もしくは何度もアップ&ダウンを繰り返しても「着地」させる決意は強いのだと感じた。