ロボットらしくないからこそ低コストになる

ビジネスモデル

未来シアター(日テレ)は面白い放送があるときに録画して観る。様々な分野で世の批判や失敗を恐れず、イノベーションを起こしている人々を革新者(かくしんもの)と呼び、彼らの生き様を番組が選んだ主題歌と共に紹介していく、というのがコンセプトらしい。

10月11日(金)の放送は焼き肉の有名店とロボット開発ベンチャーの2人の「革新者」。小生が真剣に観たのは後者のマッスル株式会社社長、玉井博文氏。コンピューターを小さくし、ロボット用のモーターに内蔵するまでしたのが成功のポイント。軽くて自分で塀を登れるロボットを開発することに成功して注目を浴び、中小企業の星と呼ばれる(安倍首相も視察に訪れた、とある)までになった。

「人の役に立とうとチャンスを20何年か伺ってきた」。ようやく色々な依頼が来るようになり、一番要請が多かった介護ロボットの開発に取り組んだのだ。これは介護の現場から悲鳴に近いリクエストがあるのを小生も知っている。特に寝返りを打たせたりするのは重労働で、お風呂に入れるために抱きかかえるのは時としてギックリ腰を誘発する。過酷な労働環境なのだ。

ロボット開発が要望されていながら難しかったのは、一つには、いかにもロボットや機械といった冷たい感じのデザインでは要介護者(介護される側)に拒否感情が芽生えてしまうことだという。「介護される側に安心とぬくもりを与える」という難しい課題があるのだ。

そしてもう一つ大きな課題はコスト。今までの介護ロボットは軒並み高過ぎたために普及しなかったという。如何に低コストでできるか。安心・温かい・低コストを成立させないといけないのは、かなりのハードルだ。それでも玉井氏のチームはやり遂げた。それが「ロボヘルパー・サスケ」だ。

見た目はロボットらしくなく、威圧感もなく、あたかも機械体操器具みたいだ。人間が要介護者の首下とひざ裏に腕を通して抱きかかえるのを、人の下に敷いたシートごと、このロボットというかアシスト器が行う。これだと万一にも落とされる不安はない。自動ではなく、完全な手動である。なるほどシンプルな構造で低コストでできる、発想の転換である。こうしたアプローチであれば、他にも応用が利くのではないか。