ヤフー再活性化の主因は使命感の呼び覚まし

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11月27日放送のカンブリア宮殿、ヤフーが採り上げられていました。題して「爆走する国民的サイト!これがネットの底力だ!」。こうしたネット大手はこの番組では珍しく、興味深く観させていただきました。

日本最大のポータルサイト、「Yahoo!JAPAN」。閲覧数は月間600億を超えるそうです。既に単なる“検索サイト”ではなく、日々のニュースや天気などの情報を得るのに大半の人がこのサイトを利用するそうです。他にもショッピングにオークション…等々。その圧倒的存在感は、国民的インフラと言っても過言ではないと言われます。

正直、小生はYahoo!ファイナンスとYahoo!映画は利用(他のサービスと併用)しますが、検索はグーグル、乗り換え案内はジャルダン、といった具合に違うサービスを主に利用するので、日本人がそんなにYahoo!を好きなのが不思議なくらいです。オークションも利用しませんしね。

それはともかく、番組は色々なヤフーの活動を紹介してくれました。東京ミッドタウンで最大フロアを占める、その従業員数は日本のネット企業では圧倒的な6800人(連結)を超えます。日々200を超えるメディアから入ってくるニュースの見出しを独自に編集するYahoo!ニュース(大手新聞出身の編集者だらけのようです)。サービス開始後ここまでの落札総額8兆5000億円、年間1000万人が利用するヤフオク。特に、データサイエンティストと言われる専門家たちが、集めたビッグデータを分析し、サイトの収益を上げる戦略から選挙予測まで様々なことに役立てているDS本部が面白かったですね。

96年の設立以来、右肩上がりの急成長を続けてきたヤフーでしたが、ずっと社長だった井上雅博氏が業績停滞を理由に孫正義氏により更迭され、宮坂学氏がヤフーの社長を引き継いだのが2年前、宮坂氏は当時44歳でした。宮坂氏は、巨大化し保守的になりがちだったヤフーの社内を活性化し、攻めの組織に再構築する改革を断行してきました。とにかく大企業病を克服すべく、「爆速」をスローガンに意思決定を速くすることを重視してきたことが知られています。

目立つ動きとしては、ネットショッピングを代表とする様々なサービスを無料化したことです。同時に、1泊2日でソフト開発をするハックデイを開催し、どんどん新しいサービスを立ち上げました。なかには女子校とコラボしたサービスや、被災地・石巻に復興部隊を常駐させての被災地産品のネット販売支援、全国から被災地に大勢の人を集めた「ツール・ド・東北」の取り組みなども新たに立ち上げました。確かにこうやって見ると、結構知られた活動も少なくないですね。

それでも社員が血走った眼をしておらず、いわゆるブラック化していないのがヤフーのよさではないでしょうか。ユニクロやワタミ、すき屋のゼンショーや楽天など、急成長新興企業のトップが「全速力で走れ!」と号令を掛けてきたところで色々な問題が起きているのと対照的です。その秘密は“爆速”宮坂改革の柱となる理念が「課題解決」だと打ち出したところにあると、小生は見ています。

“社会の様々な課題をネットの力で解決する”と宮坂社長がヤフーの使命を位置づけたことが、社員の方々の共感を呼び、ちょっとした使命感につながっているような気がします。「成長」を旗印にガンバリズムを呼び掛けても、それで奮起できるのは出世を期待できる幹部社員だけです。それより一般社員のやる気は、こうした「自分達が社会にどう役立つのか」を示すところから呼び覚まされるのではないでしょうか。