ビットコインのもたらす世界は究極の「自己責任での利便性」

ビジネスモデル

1月21日(火)に放送されたNHKのクローズアップ現代「仮想通貨 VS 国家 ビットコインの衝撃」で採り上げていた、世界で急速に拡大している仮想通貨「ビットコイン」。名前は聞いたことがあるくらいで、実態については殆んど知らなかったのですが、この番組を観て興味を持ちました。

どうやって入手し、使うのか。別の番組ではその様子を少し詳しめに教えてくれました。渋谷の繁華街での仮想通貨の取引の様子です。日本人男性がアメリカ人男性に現金を支払い、ビットコインを購入しました。手続きはスマートフォンで、僅か1分。30万円は、インターネット上の2.6ビットコインに変わりました。

注目すべきは、価格の動き。2013年初には1ビットコインは、およそ1,000円で取引されていましたが、利用者の拡大とともに徐々に値を上げ、11~12月にかけて世界中から投資が集まり、価格が急騰。結局、1年で100倍以上(10万円以上)に高騰しました。投資の結果に喜ぶ人もいれば、実感のなさに戸惑うばかりの人もいます。

番組で紹介したのは、格闘技の教室を開いている男性。1年前、生徒から授業料15万円の代わりに130ビットコインを受け取りましたが、仕組みもよく分からないまま、放置していました。しかし、最近、価格を確認して目を疑いました。1ビットコインが10万円以上になり、受け取った授業料が、およそ1,500万円相当になっていたのです。男性いわく「単純にすごいとは思うが、有効活用する方法も、よく分からない。まだ実感がない」と。そりゃそうでしょうね。

「仮想の通貨」が、世界に広まったきっかけは、ヨーロッパの“経済危機”だったそうです。国民の預金の一部を、国が強制的に徴収する事態もギリシャなどで発生しました。自分のお金を守りたいと、大量のマネーがビットコインに流れていったのです。

「ビットコイン」は、もともと、こうした事態を想定して作られた通貨でした。2008年、「サトシ・ナカモト」と名乗る、架空のプログラマーが書いた論文です(発案者がどうやら日本人だったこと、これも初耳でした)。ビットコインの目的は、国家から独立した通貨を作ることとしています。通常の通貨は、財政危機などで国家の信用が落ちれば、その価値も失われかねません。そこで、国家の枠組みを超え、世界共通の通貨をインターネット上に作ろうと考えたのです。その価値は、通貨の総量を厳しく制限することで担保します。この考え方に賛同した世界中のプログラマーによって、ビットコインは自然発生的に生まれたのです。

ビットコインは、今、ネット上だけでなく、現実社会で通常の通貨と同じように利用され始めています。財政難に苦しむ国々で、米国でさえも、自国通貨を信用できないという人たちがビットコインに流れ始めているのです。ビットコインの取引所によりますと、いまや、世界、数百万人が利用し、その市場規模は1兆3,000億円に達しているといいます。

その結果、世界は、この「新たな通貨」への対応を迫られることになっています。中国では、ビットコインが人民元の地位を損ないかねないと使用を禁止しています(でもネット上ではまだ使えるようですが)。他にも禁止している途上国がありますが、多くの先進国は無視するか、「自己責任だ」と警告するかに留まっています。日本はどう対応するか、「検討中」だそうです(他国を見て決めるのでしょう)。

もっと大きな問題もはらんでいます。アメリカでは、ビットコインを使用した、麻薬などの違法な商取引に頭を悩ませています。ビットコインで決済する通販サイト。ここに掲載されているのは、コカインや偽造パスポート。ビットコインで購入しても個人情報が残らず、購入者を特定することはできないため、違法な闇取引に利用されているのです。国が追跡しきれない資金の流れを生み出したということは、(番組では指摘していませんでしたが)きっとマネー・ロンダリングに使っている闇組織もあるでしょう。

さらに、ビットコインには価値の保証がないだけに、一度信用を失えば、またはコンピュータ・ネットワークのトラブルが生じても、すべてが消えてなくなってしまう危険性もはらんでいます。その時、誰かに責任を問うこともできません。

保有者たちがそうしたリスクを理解して使う(つまり自己責任で使う)分にはとても便利な仕組みで、ますます利用場面は拡がると思います。各国の財務官僚だけでなく、VISAやMasterも非常に嫌がるでしょうが。