ビジネスモデルはどのように構築すればよいのか?

ブログビジネスモデル

The Ownerという経営者向けウェブメディアの『経営者のお悩み相談所』というコーナーで執筆した、第22回(私にとっては9つ目)の記事をご紹介します。題して『ビジネスモデルはどのように構築すればよいのか?』です。

今回の経営者からの質問は『イノベーションにはビジネスモデルが重要であると聞きますが、ビジネスモデルをどのように構築すればよいのでしょうか。リーンスタートアップやデザインシンキング等の考え方を適用すればよいのでしょうか』というものです。

 

(ここから記事の中身です)

戦略構築のアプローチとしては「競争戦略の構築」「新カテゴリーの創出」(「ブルーオーシャン戦略」がその代表)と並んで「新ビジネスモデルの構築」というものがあり、それがお尋ねのものに当たります。実はビジネスモデルの構築には幾つか「流派」があって、そのやり方は確立している訳ではありません(確立していると云えるのは3つの中で「競争戦略の構築」だけです)。そこで今回は基本となるべき考え方と、なるべくオーソドックスとされるやり方をベースに解説したいと思います。

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ビジネスモデルの定義

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まずは「ビジネスモデルって何?」という定義を共有しましょう。さもないとボタンの掛け違いが生じかねません。色々な人が好き勝手な解釈でビジネスモデルを語るため、一般の人にとっては何となく分かったような分からないようなもの、それが「ビジネスモデル」という代物だと私(回答者)には感じられます。以下に代表的な識者による定義を3つほど挙げます。

「ビジネスモデルは、顧客への価値提案を支えるロジック、データ、エビデンス、ならびにその価値を提供する企業の収入とコストの構造を表現する」(UCバークレー校 デビッド・J・ティース教授)

「ビジネスモデルは、4つの相互に関連づけられる要素から成り立っており、それらが一体となって価値を創造して届ける。それらは、顧客への価値提案、収益方程式、鍵となる経営資源、そして業務プロセスである」(戦略コンサルタント会社・イノサイト社 マーク・ジョンソン会長)

「ビジネスモデルとは、どのようにすれば会社がうまくいくかを説明するストーリー。優れたビジネスモデルは、顧客は誰で、その価値は何かに答えてくれるし、また、どのように稼ぐのか、そして、どうすれば適切なコストで顧客に価値を提供できるのかの経済的なロジックを示してくれる」(『ハーバード・ビジネス・レビュー』戦略担当編集者、ジョアン・マグレッタ氏)

いかがでしょう。米国の知識人って、どうして回りくどい表現が好きなのでしょうか。「もっと簡潔に言えんのかい!」と突っ込みたくなりますよね。

ここでは最もオーソドックスかつ分かりやすい表現で定義したいと思います。ずばり、ビジネスモデルとは『価値の創造・提供の仕組み』と(価値の回収である)『儲けの仕組み』を組み合わせたものです。つまりビジネスモデルには『価値提供モデル』と『収益モデル』の2つのカテゴリーがあるというのが一般的な解釈です(ついでにいえば、この2つ以外にも、垂直統合vs水平分業や請負生産、購買代理など『産業における役割分担の仕方』など他の側面にも注目することもあり得ます)。

ちなみに、新たなビジネスモデルを考え出すのは新しい事業や新しい市場向けだけとは限りません。従来市場向けでも、新たなビジネスモデルを構築することで競争を勝ち抜いたり収益を改善したりすることがあり得ます。コロナ禍でお客さんが来店してくれなくて困った飲食店がデリバリーに活路を見出そうとしているのがその一例です。ターゲット顧客と商品は従来と同じかも知れませんが、価値の提供方式と収益の回収方法は違っていますよね。

(以下、記事に続く。無料会員の登録をしてあげてください)