バイナリー地熱発電という代替手段

ビジネスモデル

週末の報道番組でバイナリー地熱発電を紹介するものがあり、興味深く観た。

このブログでも何度か書いているが、地震国ニッポンには地熱発電が非常に向いている。わざわざ遠いアラブからアブラを、そしてロシアからガスを高いカネで買わなくても、本当は身近にエネルギー源が豊富にあるのだ。しかし通常の地熱発電は、温度が150℃以上の地下からの蒸気でタービンを回す構造ゆえ、適地が限られるとされる。その大半は国立公園内か、既に開発されている既存の温泉に隣接する場所であり、試掘のためのボーリング計画すら猛反対が起きる(後者についてはただの既得権益者なのだから、公共の利益のためには無視してもいいと小生は思うのだが)。

それに対しバイナリー地熱は、もっと温度の低い蒸気の持っている熱を水よりもっと蒸発しやすいペンタン(沸点36℃)などに熱交換させて、その蒸気でタービンを回して発電するように工夫したものである。これだと既存の温泉井戸でも(または温泉としては不適なものでも)利用可能なため適地は格段に拡がる。実際、今日本で唯一商用化している九州電力の八丁原(はっちょうばる)地熱発電所が使っている温泉も、温度も噴出圧力も下がり、使えなくなった温泉を転用したものだという。

TVに映ったその設備は随分小ぶりで、調べてみるとイスラエル製という(三菱重工業などが技術を持っているが、小ぶりの設備には本格参入していないらしい)。そのため維持管理に手間とコストがかかるそうだ。ならば三菱重工業などは中小企業に技術を売って欲しいものである。どうも日本は変なところで大メーカーに依存し過ぎていて、わざわざ無駄なことをしている。

もう一つバカくさいのは、環境に負荷が少なくコストも抑制でき、エネルギーの地産地消にも向いているバイナリー地熱にすら、地元の温泉宿が反対行動を起こすのでなかなか進めないそうだ。「温泉の湯量が減ったら、どうしてくれるのか。バイナリーでも地下の温泉資源を使うことは同じ。温泉は国民の財産として守るべきだ」と話す地元の反対派には、己の既得権益に少しでもリスクをもたらすものは頑として反対するのである。(表面的な言葉とは裏腹に)公共の利益という概念が全くないとしか思えない。

国内のバイナリー発電に有望な53~120度の地熱資源をフルに生かせば合計833万キロワット分。中型原発8基分もの電力をまかなえるという試算もあるくらい有力な再生可能エネルギーに、政府は本気で取り組むつもりはあるのだろうか。こうした具体的なところに細かな配慮と対処をスピーディに進めていかないと、2030年の原発廃止なんて夢のまた夢となってしまう。急げ!