ネットワーク化&IT化された在宅医療が高齢者の生活と「死に方」を変える

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3月6日のカンブリア宮殿は「ニッポンの超高齢社会を救え!異色の経歴の医師が挑む医療革命!」と題し、祐ホームクリニック理事長・医師、武藤真祐(むとう・しんすけ)氏がフィーチャーされていました。確かにこの人、経歴がちょっと変わっています。

武藤医師は6歳のときに野口英世展を見て医師になることを決意。 東大医学部卒業後、天皇の侍医として活躍したそうです。しかし医療の現状に満足せず、医療の世界を飛びだしてマッキンゼーで問題解決のノウハウを学んだのです。独立後に作り上げたのが、患者の自宅で診療する在宅医療を専門に手掛ける「祐ホームクリニック」です。

日本が今後、直面する〝2030年問題〟。65歳以上の高齢者の割合が30%を超え、病院のベッド数不足などから死に場所に困る人が50万人にものぼるという深刻な事態が間もなく訪れるといいます。この問題の解決に一役買うと期待されているのが、こうした在宅医療専門のクリニックなのです。

一人で在宅医療に取り組む医師が多い中、現在42歳の医師・武藤氏は30人もの専門医を揃え、24時間365日対応、設立4年で450人もの患者を抱える人気クリニックに育て上げたのです。これまで医師一人で行うことの多かった在宅医療を高齢者に関わる関係者をネットワーク化し、加えてIT化によって事務作業を極力減らすことで、在宅医療の常識を変えたのです。

今は9割近くの人が病院で死を迎えるのですが、高齢者が増え続ける今後は病院で死を迎えることが難しくなると予想されます。 特に2030年には約50万人(!)が死に場所を失うといわれています。

武藤氏は、自宅で死を希望している人は実に9割近くに上るものの、逆に9割近くが病院で亡くなっていく現状を問題視します。つまり本当はおうちで家族に見守られながらの死を望みながら、実際には大半の人が冷たい病院で死を迎えざるを得ないのです。彼が最も大切にしているのが、患者の生活の質をいかに高め、患者と家族が満足な形で〝自宅で人生の最期〟を迎えてもらうことだといいます。

武藤氏は東日本大震災の半年後に宮城県石巻市に分院を立ち上げ、仮設住宅や孤立世帯への在宅医療に取り組んでいます。被災地は若者が流出し高齢者ばかりが取り残され、さらに一層の高齢化が進む、未来の日本を先取りした状況になっています。そんな中、医師以外に高齢者の家を訪れるヘルパーと情報を共有出来るよう、最新のITシステムを作り出し、数十社もの民間企業も巻き込んで、ボランティアではなく民間で高齢者を支えるビジネスモデルを構築しようとしているのが武藤医師なのです。素晴らしいです。今後も日本の医療を変えていく役割を期待したいですね。