ニッポンのスーパードクターは世界を駆ける

グローバル

3月10日に放送された未来世紀ジパングは”世界を救うニッポンの医療”第三弾。「世界を救うニッポンのスーパードクター」と題し、日本のスーパードクターが世界を飛び回り、その国の医療レベルでは不可能だった治療や診断に挑戦し、命を救う様子を伝えてくれました。

今回は2人のスーパードクター。1人は日本で人気の亀田総合病院のエースで、”がん大国”と言われるミャンマーへ。もう一人は生体肝移植の世界的第一人者で、”肝臓病”で悩むエジプトへと向かいました。

千葉県鴨川にある亀田総合病院。医師数450人、一日の来院患者3000人という、日本有数の人気病院です。最新の医療設備、さらにホテルのような豪華で居心地の良い施設です。病室は全室オーシャンビュー、病院食は14種類のメニューから選べ、酒の飲めるレストランまであります。

その亀田総合病院に協力を求めてやってきたのが、ミャンマー保健省の関係者。実は、ミャンマーは“がん大国”なのです。にもかかわらず、鎖国時代の経済停滞のせいで、いまだに満足な医療を受けられる状況にないのです。国民健康保険制度がなく、大病院に通えるのは一部の富裕層だけ。庶民は伝統医療と呼ばれる、薬草などを使った昔ながらの治療法に頼るしかないのが実態です。

そんなミャンマーに乗り込んだのは、亀田総合病院の戸崎光宏医師です。戸崎医師は、乳がん診断のエキスパート。“神の眼”と言われる読影技術で、乳がんの検診画像から瞬時に癌を見つけ出す凄腕です。一日およそ200人分(!)の画像を診断、早期発見に力を発揮しているのです。

ミャンマーでは、がんの死因の中でも乳がんがトップの死亡率。検診が普及して早期発見できれば、死亡率がぐっと減るはず。日本政府の後押しもあり、ミャンマーで初めて大々的な乳がん検診が行われることになりました。亀田総合病院は、岡山大学病院、医療コンサルタント会社メディヴァと組んで、日本式の検診システムを普及させようとしているのです。なんとかこの試みが成功するといいですね。

もう一件はイスラムの国エジプトです。ある日本人医師に感謝する家族が映されます。「感謝してもしきれない。タナカは神が私のために送ってくれた特別な人だ」と。その人物とは田中紘一医師、72歳。乞われて、2001年から毎月のようにエジプトに通っています。
エジプトは肝臓病大国。70年代にナイル川に住む寄生虫の予防注射を一斉に行ったが、その時に注射針を使い回したため、いまだに年間50万人もの人達がC型肝炎を発症しているということです。悲惨な話です。C型肝炎は悪化すると肝臓がんになります。

田中医師は、“生体肝移植”と呼ばれる肝臓の移植手術の第一人者で、毎年エジプトの患者たちを救うべく手術しに渡っているのです。ほぼ毎月ですから年齢的にはきついはずですが、使命感のせいか、田中医師に疲れの表情はありませんでした。

番組の中で、手術中にハプニングがありました。レーザーメスが故障したのです。でもさすがベテラン医師、田中氏は慌てず騒がずに淡々と手術ハサミを使って(つまり手動で)肝臓を取り出していました。そして際どい部分のオペを済ますと、あとはエジプトの医師たちに経験を積ませるために任せていました。こうした余裕が似あう風格がありました(老齢といっていい日本人男性ですから体格は大したことないのですが)。こうして毎月何人かのエジプト人の命を救い続けているのですから、感謝されるのは当然ですね。

番組のナビゲータの人が考える究極の「おもてなし医療」が、日本の皆保険制度です。確かに、平等に少ない負担で庶民が医療を受けられるこの制度こそ、これから経済成長する途上国にぴったり適合する制度であり(米国ではオバマ大統領がその導入に政治生命をかけながら悪戦苦闘中ですが)、日本が制度設計においてズバリ貢献できるものです。