ドイツ、見習うべきところが多い工業大国

ビジネスモデル

7月13日に放送された「未来世紀ジパング」は「池上彰2Hスペシャル!”知られざる注目国”」の第一弾、「ヨーロッパの”主役”ドイツ」だった。幾つもの示唆があり、興味深い番組だった。

最初は「世界で一番行きたい」名所にも数えられる「ロマンチック街道」。その中核は中世の街「ローテンブルグ」。世界中から年間200万人の観光客が訪れ、日本人の観光名所となっている。ノイシュヴァンシュタイン城の姿はワーグナーのCDなどでよく見たことがあるが、香港ディズニーランドのシンデレラ城のモデルとされているそうだ。「ロマンチック街道」というネーミングと観光スポットを線で結んだ戦略がとにかくうまく当たったということだ。

“失われた街”といわれたドレスデン。美しい古都だったドレスデンは終戦間際の1945年2月、無差別爆撃を受け、街の80%以上が焼失、2万とも10万とも言われる人々が死亡したのはよく知られている。この古都に根差すのが高級時計メーカーA.ランゲ&ゾーネ。無差別爆撃で工場が破壊され、共産化による接収・国有化を乗り越え、ベルリンの壁崩壊後に再建。波乱の歴史に翻弄されながらも見事に世界最高峰の技術を復活させたのだ。製造工程のこだわり具合は見ものだった。特に完成品を一旦組み上げてから再度バラし、洗浄後に塵のない部屋で再度組み立てる、という徹底度には目を見張った。

次はドイツの一大産業、自動車。世界の高級車市場で販売台数トップのBMWでの新車発表会、新車引き渡しなどを観ていて、ワクワクするような“ブランド”戦略に感心した。1台当り利益で見ると、日本のメーカーではトヨタが最高で27万円、他は10万円台前後。それに対しドイツの各メーカーは軒並み40万円以上。まったく同じ産業とは思えないくらいの差だ。

時計と同様、やっぱりブランド力の違いというのは大きいと改めて感じた。価格戦略と併せてマイスター制度がそのブランド力を支えているという解説もあった。日本人は「いいものを安く」と考え、ドイツ人は「いいものであれば高くても買ってもらえる」と、ベースの考え方が大きく違うというのがここで教えられることだ。

ドイツはGDP世界4位、日本は3位。しかしその労働時間は、日本の年間労働時間より300時間以上も少ない(日本も随分減ったのだが)。番組ではAdidasの社員に密着し、同じオフィスで働く外国人、日本人の目から見たドイツ人の働き方を見せてくれたが、要は密度の違いということのようだ。その分、休日には店が開いていない、自宅への持ち帰りも少なくない、などのネガティブな側面も紹介されたが、やはり日本人から見ると大したものだと感心した。いや正確には羨ましいという感覚か。