ソフトバンクの会話ロボットPepperはただならぬ戦略的商品

ビジネスモデル

ソフトバンクが来年2月の発売を予告した人型会話ロボットのPepperは大いに注目を浴びています。6月5日の孫社長の発表時にも反響が大きかったようですが、その後も色々と関連ニュースが飛び込んできます。

報道番組や幾つかのYouTubeにもPepperと人との会話の様子が映されていますが、それなりに会話が成り立っていますね。音声認識だけでなく、カメラで相手の表情も認識して、コミュニケーションをよりうまく成り立たせるようになっているそうです。思わず笑ってしまうような見事な会話の切り返しは、よしもとロボット研究所が開発協力をしているおかげだそうです。

発売前に人との会話データをもっと集めるために、ソフトバンクの銀座店と表参道店で現物と会話できるようになっています。かなりの人が実際に行って、会話を試しているようです。店内がざわついているので、人間の声をPepperが多少聞き取りにくいようですが、通常の家庭や会社での使用なら問題なさそうです。なお、今回のお披露目では時間が限られているので、自ら会話を打ち切るようにプログラミングされているようです。
http://www.youtube.com/watch?v=-sz339tx7-c

性能がなかなかよいのに値段は20万円を切る戦略的設定なので、驚きです。当初は損覚悟だと思いますが、これなら買う人は随分多いと思います。マニアだけでなくちょっと懐に余裕があるビジネスマンや悠々自適の高齢者(しかも会話相手に不足気味の)なら欲しいのではないかと思います。

MMD 研究所の調査では、Pepper の発表を知っていた人は全体の69.5%いるが、「購入したいと思う」人は2.9%にとどまったということで、大したことがないようにも見えますが、訊いた相手はネット上の若者が大半でしょう。大人がこの性能を知ったら態度は変わると思います。しかも来年2月までに相当性能が上がると思います。

ちなみに製造面に関していえば、会話だけの機能なので「歩行」の難しさはありません。多少手などが動くのでモーターも少しは使っているようですが、稼働部分によるコストは抑えていると思われます。そして戦略的値段で一気に市場を握って、台数をまとめることでコスト削減をする狙いは明らか。孫社長らしい思い切った賭けですし、多分、正解でしょう。

このPepperは通信機能を持ち(WiFiとつながるのでしょう)、センターのクラウド側に人口知能を持つと聞いていますので、購入先での会話(言葉だけでなくボディランゲージまでも含むかも知れません)のビッグデータが溜まり、よりスムーズなやり取りができるように集合体として学習できるモデルだと思います。これはなかなか賢いやり方です。もしかするとグーグルが自動運転に力を注ぐ間に、そしてアップルが画像センサーを使わないSiriに拘っているうちに、ソフトバンクは人口知能による対話ソフトで世界でも群を抜く存在になるかも知れません。

会話型ロボットPepperを開発したのは、ソフトバンク子会社でロボット開発を手掛ける仏アルデバラン・ロボティクス社。すでに世界70ヵ国以上でヒト型ロボットを販売している先進的な企業です。
http://toyokeizai.net/articles/-/39911

同社以外にもソフトバンクはロボット事業を進めています。それがグループ会社のアスラテックが担う「新規ロボット事業」で、ロボット制御ソフトウェア「V-Sido OS」およびV-Sido OSの一部機能を実装したマイコンボード「V-Sido CONNECT」を主軸とした事業展開を考えているようです。このOS上でソフトを開発してもらうよう技術者にも呼び掛けていますね。

ソフトバンクは本気でロボット事業を育てようとしているようです。エネルギー事業よりは通信事業との相乗効果も高そうですので、ニッポン代表として頑張ってほしいですね。