コメを愛し国と闘った男が仕掛ける新戦略

ビジネスモデル

10月30日 (木)に放送された「カンブリア宮殿」は「もうひとつの農協を作れ!“ヤミ米屋”と呼ばれた男が仕掛ける農業維新!!」。ニッポン農業界の異色の男、秋田の大潟村あきたこまち生産者協会の社長・涌井徹氏の話です。

八郎潟を1964年に干拓して作られたのが大潟村です。涌井氏も大きな夢を抱き、21歳のとき、大潟村に入植。しかし、その直後に国は「減反政策」を打ち出しました。「猫の目行政」「ノー政」といわれた農水省の一貫性のない政策の典型です。

「米を作る自由」「米を売る自由」を目指し、その後に大潟村の農家が挑んだのは、「減反の強制」「青刈り」「農協によるコメの買い取り許否」など、国と県による嫌がらせと強制による権力との闘いでした。その過程で数人の農家が相次いで自殺しました。青刈りというのは実り切っていない稲を強いて(拒否すると農地を採り上げると脅し)農家に刈らせることです。農家にとってこれほど残酷な仕打ちがあるでしょうか。

一切の財産を処分して入植した若き涌井氏も、「米を作るな」という圧力にさらされることになったのです。生産者協会という名の会社組織を設立し、40年にわたって国や農協との戦いの先頭に立ち、「農家の自主自立」を目指してきたのが涌井氏です。強引な国の「減反政策」と戦う姿は何度も、TVのドキュメンタリー番組で報道されています。

行政との戦いの末、産地直送を始めた涌井氏は、インターネットが普及する前から個人直販にこだわり、コメを売ってきました。涌井が経営する「大潟村あきたこまち生産者協会」の取扱量は、今や年1万トン。「あきたこまち」を個人会員7万人・法人会員7000社に届ける巨大組織で、いまや日本最大級の産地直送の米販売会社です。

契約農家から農協価格より60キロ当たり2000円ほど高く米を買い上げ、自社工場で加工し、独自の販売ルートで販売している大潟村あきたこまち生産者協会。コメの販売が完全自由化となった今も売り上げを順調に伸ばしているといいます。

涌井は、ただコメを安く売ってきたのではありません。コメに付加価値をつける商品開発にも並々ならぬ情熱を燃やしています。 また、安全・安心にも、こだわっています。肥料は有機の米ぬか肥料だけを使い、除草剤の使用は年1回しか使いません。

“儲かる農業”を目指して未来のコメ農家のあり方を考え、それを実現させるべく緻密な戦略を実行する涌井氏は、新たな事業にも挑戦しています。それがパン生地に混ぜるコメでできた商品です。これはなかなか期待できそうです。

日本にも合理的な農業経営が成立し、食糧不足に備えることができる時代が遠からず来ることを期待したいと思います。涌井氏の米への思いと愛情が世の中に広まることを願いながら。