カネボウ『美白』問題の真相は犯罪と無責任の「重ね塗り」

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NHKのクローズアップ現代で9月2日に放送された「最新報告 カネボウ『美白』問題」は、当社のメルマガでも紹介していた「注目番組」。予想以上の衝撃的内容で、一種の犯罪行為が行われたことも明確であり、それに加えて会社としてもファンを裏切った罪は重い。

本件、白斑症状を訴える被害者数が遂に1万人を突破したという。国谷裕子キャスターは「カネボウが美白化粧品の自主回収を始めてから、間もなく2か月になります。時間の経過とともに新たな事実も浮かび上がってきました。美白化粧品を数種類重ね塗りしている人に症状が多く出ている傾向が分かりました」と番組冒頭で紹介した。化粧品が肌に合わないことによる白斑症状は通常、使用を中止すれば多くの人は治るとされている。しかしこのケースの場合、2年以上経っても消えない人もいる。なぜか。

番組が注目したのはカネボウが独自に開発した美白成分のロドデノールだ。色素細胞が作り出すメラニンの量を抑えることで肌を白く保つ成分だとカネボウは謳っていた。しかし、ロドデノールによって色素細胞そのものが破壊されるケースがあることが分かってきた。しかも20年前、ロドデノールを生産していた工場で従業員が白斑を発症していた。こうした事実を関係者が無視したこと、これがまずは重大なミスだ。

国谷「美白化粧品の有害性について、早い段階から医師やユーザーによって情報が寄せられていたといいます。それなのに、自主回収まで時間がかかったのはなぜでしょう」
中村「当初、カネボウの担当者は連絡があっても化粧品による“かぶれ”だろうという認識で、事態の深刻さを理解していなかったようです」
この「事の重大さを担当者が認識せず、上司・上層部に報告せずに握り潰す」というのは大企業では時折ある(雪印、三菱自動車など)。化粧品会社としては致命的なミスだが、そうした意識を持たせなかった会社としての不出来である。これがために大会社といえども潰れかねない。ましてやカネボウは事業再生で身売りした会社であるのに、危機意識が既に消えうせたのだとしたら情けない。

あきれ返るのは、番組が指摘する「美白化粧品を数種類重ね塗り」というのが他社製品ではなく、カネボウの美白化粧品シリーズの重ね塗りなのである。カネボウの販売員が店頭でお薦めし、それを信用した消費者がカネボウ製品を重ね塗りした結果、被害が深刻化したということである。しかも3種類以上の重ね塗りを販売戦略としてお薦めしておきながら、副作用が起きないかという検証は2種類までしか行っていないという。

とんでもなく不誠実・無責任な体質の化粧品会社である。その結果、多くの大切な自社製品ファンを裏切り、その人生を台無しにしたのである(この化粧のせいで就職や仕事の継続、結婚が妨害された人たちがどれほどいるのか、想像すべきだ)。こんな会社はもう一度、今度は完全に潰れていい(小生は前回のカネボウの身売りに関しては同情的だったが、今回は全く違う)。

ロドデノールは過去に白斑を発症させるという出来事があったにもかかわらず、なぜ医薬部外品として認可されたのか。これに対し番組は衝撃の事実を突き止めた。
中村「医薬部外品として認可するかどうかは、最初に医薬品医療機器総合機構で審査されます。この時、カネボウが提出した報告書が問題でした。山口大学医学部の福田吉治教授の論文を引用し、白斑は完治するという報告書を提出しました。しかし、オリジナルの福田教授の論文には完治しないと書かれていました」
これについて福田教授は「自分はロドデノールによって白斑を発症した3人の女性と面談しました。このうち2人の方は完治しませんでした。それは論文にも明記しています。それがいつの間にか完治したと変わっていた。驚きました」と語った。

つまり福田教授の論文を、カネボウの関係者が改ざんしたのではないか。当然、意図的であることに疑いはない。そもそも認可されるべき商品ではなかったということである。この改ざんによって白斑症被害が多数生まれたことは間違いなく、これは完全な犯罪行為である。その改ざんを行った人間を刑事事件で立件すべきだ。全くとんでもない話である。