オバマ vs ロムニーの論戦に見るレベルの高さ

グローバル

オバマ大統領と共和党のロムニー候補の第2回討論会の様子をYouTubeで観た。

前回の第1回では、ロムニー氏が積極的に押しまくり、オバマ氏は言い淀む場面が目立った。それを反省したオバマ氏は今回、4日にわたって「特訓」を受け、この真剣勝負の場に臨んだとされる。そしてオバマ氏は第1回のような受け身的な行儀のよさをかなぐり捨て、何度もガバナー・ロムニー(本当はFormer Governerというべきところだが)の過去の言動や金持ち優遇の志向をしつこく攻撃し、前回の劣勢を見事盛り返したと評価されている。

通しで討論会を観終わった感想としては、「甲乙つけ難い」と小生には思えた。確かにオバマ氏は復活した。元々演説だけとれば、歴代大統領の中でもトップ3に入ろうかというほど、拡張高いトーンや絶妙の間が超一流なのである。そして今回は随所にオバマ節が出ていた。前回うまくいかなかったロムニーの発言の矛盾点や弱点を突く、本来のディベートに成功していた。

しかしそれでも報道がいうほど勝ち負けがはっきり出たかというと、そうは思えない。

元々ロムニー氏の政策は金持ち優遇的な臭いがプンプンしていたし、第1回討論会直前の身内の会合でのあからさまな社会的弱者への軽蔑発言もあり、投票態度を決めていないミドルクラスの投票者の予想はロムニー氏に対し相当辛いものがあった。しかし第1回の自信満々で攻撃的なビジネスマンらしさを発揮したことで、「もしかすると経済回復ができるのはこの男かも知れないぞ。性格的には問題あるかも知らんが、大事なのは景気だ」と人びとに思わせるのに成功したのである。

今回も彼は、「自分はビジネスの世界で企業業績を上向きにすること、借金を減らすこと、雇用を増やすことに成功してきた実績がある。それに対しアバマ氏は4年間で結局ジョブを増やすのに失敗した」と何度も強調し、その自信とリーダーらしさはいささかも揺らぐことがないように見えた。

とにかくこの第2回討論会で感じたのは2人の候補者のレベルの高さである。事前にどれだけ特訓しようと、会場の質問の中には予想外のものもあろう。ましてや討論相手が質問に対し、または自分の話に対しどんな論を起こすか予想できるわけではない。その内容に応じて適切に反論し、場合によっては厳しく「揚げ足を取り」、相手を言い淀ませようとする。しかも与えられた時間をオーバーすると途端にタイムキーパー役の司会者が口を挟む。

本当に「丁々発止」というのはこのことだ。こんな論争で鍛えられている政治家の中のトップが大統領になるのだ。長老との腹芸や数合わせで勝負が決まる日本の首相が太刀打ちできないのは仕方ないと思わせるものがある。