エアアジア・ジャパンの別ブランド化は不可解

ビジネスモデル

旅行大手のエイチ・アイ・エス子会社のアジア・アトランティック・エアラインズが成田‐バンコク線の運航を今日から始めた。定期便ではなく、観光シーズンのピークに合わせてチャーター便を運航、成田‐バンコク線は11月まで1日1便往復するというやり方である。需要に応じてチャーター便を飛ばすことで搭乗率を高め、その分価格を抑えるという「小回り戦略」である。

初回から機体のトラブルで予定より1時間遅れたというのが少々情けないが、バンコク行きの初便は満員だったという。澤田エイチ・アイ・エス会長をはじめとして一喜一憂したことだろう。しかし彼らの勝負はこれからである。

もう一つ、格安航空会社LCCのニュースとして、エアアジア・ジャパンが新ブランド「バニラ・エア」を発表した。エアアジア・ジャパンとしての運航は10月26日までで、年末に「バニラ・エア」として運航を始めるとのこと。特長としては、リゾート地を中心に就航し、グアムやサイパンなどが路線の候補地だという。

先日も触れたが、エアアジア・ジャパンはライバルのLCCと比べて搭乗率が低迷し、定時運航率でも最下位だとのこと。LCC3社(ジェットスター、ピーチ・アビエーション、エアアジア・ジャパン)が就航して約1年。オーストラリアやニュージーランドへの就航で業績好調なジェットスター。24時間稼働の関西空港をベースにアジア便や国内便でフル稼働に近いピーチ。

それらに比べエアアジア・ジャパンの出遅れは、インターネットからの予約の操作や説明が(エアアジア仕様で英語をベースにしているため)分かりにくいのが一因、旅行代理店ではなく直接販売にこだわった営業戦略のミスがもう一つの理由、などと解説されていた。中にはエアアジアが冠であることによる知名度の低さを指摘する声もあった。しかし真の理由は別にあると小生は睨んでいた。

成田ベースの同社は、稼働時間に制約がある上に、空港施設利用料が極めて高く、元々不利なのである。だから大したコスト削減ができない。しかもANA子会社ということで、親会社からの出向の経営・管理者など余計な人件費を抱えている可能性も高い。これは元々苦しい経営条件なのである。

今回のエアアジアとの合弁解消によりANAの完全子会社になったのだから、本来ならピーチに吸収合併するのが最も合理的な解決策だったはず。それを敢えて別会社として残し、別ブランドを再度立ち上げた(これによって知名度は再び低迷する)のは不可解である(もしかするとピーチ側から断られたのかも知れないが…)。この先数年経ってからの評価で、「あれは全くの愚策だった」と云われなければよいがと、小生は心配している。