インフラ更新に欠かせない「コンセッション」が動き出す

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4月21日のNHK「Biz+ サンデー」の特集で「コンセッション」を採り上げていた。空港などの公共インフラ運営を民間が行う仕組みであり、メガバンクや海外の投資ファンドも注目している様子が紹介されていた。

Wikipediaによると、コンセッション方式(Concession)とは、ある特定の地理的範囲や事業範囲において、事業者が免許や契約によって独占的な営業権を与えられたうえで行われる事業の方式を指す、となっている。

数年前、ベトナムの都市高速鉄道のプロジェクトに参加した際に研究したのだが、世界のインフラ公共投資は政府主導の投資とPPP(Public-Private Partnership)による投資に大きく2分され、新興国でも先進国でもPPPの割合が増えている。そのPPPの代表がコンセッション方式である。PPP契約の導入目的は、①予算制約の回避、②技術的な効率性の向上(民間部門のスキルを活用し、設計、建設、管理の段階を統合することによる)、③サービスの質の向上である。現実問題としては①ゆえに検討されることが大半だろう。

日本も財政状況が先進国中最悪にあり、今後迎えるインフラの更新ニーズに対し、税金と公債発行だけでまともにファイナンスできるケースは、10年のスパンで考えれば限られてくる。この2~3年は「国土強靭化」という比較的目新しいスローガンで公共事業を進めるにせよ、いずれ息切れすることは目に見えている。そこで今後は、コンセッション方式による(つまり民間資金の導入によって)インフラ更新/整備ができるようにしたいという思惑が、規制緩和を後押しする政府にはある。

そうした政府のセコい思惑はさておき、現実問題としてコンセッション方式の導入が進めば、日本が抱える幾つかの問題が一石二鳥的解決の方向に向かう。その問題とはカネの回りどころであり、公共インフラの老朽化である。少子高齢化に突入した国内での投資機会が限られると多くの優良民間企業が考えるために、民間金融機関は融資が伸びず、国債購入に偏った運営をしている。今後日銀が大量にマネー流量を増やすと、溢れたマネーが歪んだ不動産バブルなどに結びつく可能性が高い。しかし公共インフラ整備に民間資金が回るようになれば、マネー流量がよい方向に向かう可能性がある。

そして日本国内でのインフラ更新・運営に民間の知恵が活かされることで、お役所主導による箱モノづくりばかりが目的化する従来方式より社会的投資効率も上がる可能性は高い。いかに無駄を省きながら利用者の利便性を上げ、利用度合いを上げて収益向上をもたらすか、ここに民間の知恵が使われる方向にインセンティブが働くからだ。少なくとも「成長戦略」のための規制緩和としては正しい方向、と好意的に見たい。